第30話

 結局その日の同窓会に清空が来ることはなかった。

 恋次君と遥ちゃんとは、それ以降度々会うことになった。

 懐かしい思い出話などで花を咲かすことができた。

 大人になってから友達をつくることは難しい。

 何故なら、その分出逢いが少ないからだ……

 それは仕方がないこと……

 だけど、こうやって同窓会に来ることが出来てよかった。

 懐かしい友達と再会することが出来た。

 それだけでも来てよかったと思う。

 この日、家に帰ると久しぶりに清空に連絡を入れてみた。

 相変わらず返事はない。

 まぁ、いつものことだしいいか……

 俺は軽い気持ちでそう思っていた。

 そして、数日が過ぎた。

 清空にメールを送ったことを忘れかけていたころ事件が起きた。


「斎藤 一ってヤツはいるか?」


 役所にひとりの男が訪ねてきた。


「どちらさまですか?」


 俺は、その男性に声をかける。

 男性は俺の首から下げている社員証を見たあと突然ナイフを取り出した。


「お前が斎藤 一か!」


 男は、そう言ってナイフを振ります。


「な、なんだ?」


 俺は、この光景を知っている。

 前世俺を殺した男にコイツは似ている。

 俺は、ナイフを避けたあと男に一撃を浴びせた。

 だけど、ひ弱な俺の一撃など男には大してダメージを与えれなかった。

 男が、俺の身体にナイフを刺そうとしたその時、女の子の声が響く。


「やめて!源(げん)君」


 この声、もしかして清空?

 俺は、その声の方を見る。

 すると綺麗で可愛らしい女の子がそこにいた。

 雰囲気が大分変わったけれど、この子は清空だ。

 男は清空の方を見たあと俺を睨む。


「コイツがお前の浮気相手なんだろう?」


「違うよ!

 一は、幼な馴染み!」


「そんなのは知っている。

 だけど、コイツからメールを貰っただろう?」


「うん」


 男の問に清空が答える。


「だったら立派な浮気だろう?」


 なんか、言っていること滅茶苦茶だな……

 ってか、彼氏とかいたんだね……

 そっか、もう俺ら27歳。

 もうすぐ28歳になるんだもんな……

 彼氏とかいても、むしろ結婚していてもおかしくない年齢なんだよな。

 俺は、そう思うと少し切なくなった。

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