第25話 シャンプーハットとして使うと水分を吸って首が

 朝。

 出発の準備が整ったのでコンテナを送還し、ガワだけ再召喚する。

 サイコロを分解した時のように、一部連結したまま展開。

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 こんな感じで。


 この展開状態で、ほんの僅かな実験だが成功したので送還。

 ポンコ……タカミヤ侯爵を待つ間に、もう一度ギルドで1品登録しておいた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 侯爵が来たのは予想より遅く、朝の9時くらい。

 明確な待ち合わせ時間を決めてなかったので、あっちが常識的な時間に来たんだろう。


『おはようございます、タカミヤ侯爵』

「おはよう、ヒノ夫妻。今日はよろしくお願いする」

「はい」


「やはり馬車の用意はないようだな。良ければ私の馬車に乗るといい」

「では、防壁の外までお願いします」

「……? わかった」


 護衛や荷物を含めた馬車4台の3番目に侯爵と共に乗り込む。

 外からはしゅっぱーつ! と大声が聞こえ、馬車が動き始めた。

 そして訪れる振動。


 振動吸収機構のない馬車にガタガタ石畳。

 クッションの薄い馬車の座席が尻をなぶり、奥歯もガタガタ言わせてくる。

 そんなこんなで唯一持ち込んた荷物がこれ。


「穴空きクッション〜」


 すかさずティアにも渡して、2人でないよりマシを体感する。

 もうひとつあるけど、シャンプーハットみたいに頭に乗せる。意味はない。


「ヒノ殿、それは?」

「真にいい物とは、言葉で語るより自らの目で耳で体で感じるべきですよ」


 シャンプーハッ……穴空きクッションを侯爵に渡す。


「ずいぶん肉厚なクッションなのだな……おおっ、これは!」

「それも今朝、ギルドにて登録してきました」

「これは素晴らしい。見慣れぬ形だとは思ったが、ヒノ殿の商品であったか」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ヒノ様、防壁を超えました」


 しばらくして馬車が停止すると、外から執事が知らせてくれる。


「ありがとうございます、今出ます。侯爵、まだ少し停止していてください。あまり近くだと馬たちが驚いてしまうかもしれないので」


 侯爵が頷いて執事に指示を出しているのを横目に、馬車から100メートルほど離れた位置にコンテナを遠距離召喚。

 馬車の中に居ない護衛や御者が、なんだこれはとか騒いでいる。


「時間のある日中に説明しておきますね。これは俺の召喚した、コンテナっていう金属製の箱になります。見た目通りの大きさで、かなり頑丈で重いので、夜はこの中に入って宿泊可能になります。道中何か予想外の出来事が起きて夜営する事になってから、コンテナの説明するのは混乱を招くので。なお安全性は、侯爵が中で俺達とお茶をした、と言えば信頼していただけるかと」


 説明後まだ少し集団に落ち着きがなかったが、侯爵の私に恥をかかせるのかとの言葉で治まった。

 馬は落ち着いたままだったので、直ぐに再出発出来た。

 馬より劣る冷静さの護衛と御者、か。

 驚くのは仕方ない事だけど、少し道中が心配である。

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転校じゃくて異世界に?コンテナ携え頑張ります 天神 運徳 @amezingdragon831

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