第24話 麗人侯爵のポンコツ疑惑

「私が調べた情報ですと、侯爵の結婚に対して反対していた人達は、全員善意からの言葉みたいですね」

「えっ、いつの間に調べたの?」


「妻は情報収集に強い能力の持ち主なので、集めるのが速くても気にしないでください」

「そうなの? わかったわ」


 日本まで往復した俺としては、ティアが何しようが今更なのだが、初見の侯爵は驚いて当然だろうな。

 今後は気を付けるべきか。


「それで侯爵の結婚相手の候補が、国内では1人だけ存在します。第18王子の」

「ひやぁー」


 ん?

 ティアの話しの途中で、なぜか奇声を漏らす侯爵。

 自身の髪にも負けないくらいに顔を真っ赤にしているので、おそらくその王子にホの字なのだろう。

 ティアは幸せになれるといいですね的な美しい笑みを浮かべているのに。

 俺は楽しい事になりそうだと、悪ガキそのものの笑顔だったらしい。


 その場において最適な表情を作る事をポーカーフェイスと言うが、俺には人生の対人経験が足らんのです。

 多分60年分くらい。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「第18王子」

「ひゃぁー」

「第18王子」

「ひゃぁー」

「第18王子」

「ひゃぁー」


 これ、面白いな。


「ルドルフ」

「ひゃぁー」

「ルドルフ」

「ひゃぁー」

「ルドルフ」

「ひゃぁー」

「アキラさん、もうその辺りで」

「せやな」


 侯爵の結婚相手はルドルフ第18王子が最適なのだろう。

 相性的にも、侯爵の好意的にも。

 全部ティアに任せておけば解決しそうだが、ここは後の夫婦関係にも関わってくるので侯爵に勇気を出してもらおうか。

 ニター……


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 外で待つセバスチャ……名も知らぬ執事さんに話しをつけて、王城まで先触れを走らせて貰う。

 理由はこじつけで珍しい品が手に入ったから献上って事で、予定日の前後にルドルフ王子は、王都から出る用事は入っていない。

 品は登録したばかりのチェスやリバーシと、他にも数種類持っていけばいいだろう。

 未登録の物は持っていかない。


 件のルドルフ王子はドワーフでありながら身長180センチを超えるイケメンで、好みの女性のタイプについてもピンポイントで目の前の、それまんまヴァイオレット・タカミヤ侯爵じゃんってのを公言しているらしい。

 ポンコツ侯爵はポンコツで、王子の好みを聞いてもなお自信がないのか、未だにリアクションを取ってないようだ。


 普通王族から婚約の申込みとかするんじゃないのかとティアに聞いてみたら、どうにも王様が王子を止めているらしい。

 理由を知れば侯爵が暴れそうなので、うっかりアキラさんには教えられません、だって。

 俺のどの辺りがうっかりなのか、将来ベッドのプロレスで勝って白状させてやりたい。

 止めてティア、頬を染めて瞳にハートマークを浮かべないで!

 ピンクの波動なんて出してないから!!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 色々脱線してしまった、修正しよう。

 侯爵と執事には準備をしてもらって翌日王都に出発。

 俺達はギルドに不在にすると連絡するだけ。

 ダイクにも直接言伝ことづてに行ったが、分かったの一言で追い返された。

 まあ作業中の職人なんて、あんなもんだから腹も立たない。


 その後はコンテナの天板を開けた状態で明るい日中を過ごし。

 夜は天板を塞ぎライトをともし、風呂に連れ込まれてから頬にキスして寝た。

 高まり過ぎた愛情も落ち着いたのか、ベロチューはなくなった。

 だが朝起きたら、顔がカピカピだったんだが?

 寝てる間にキスラッシュ?

 愛されてますなー、俺。

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