第23話 おぉい侯爵、言い方ぁ!!

 執事が馬車のドアを開け中から降りてきたのは、メッチャボリュームのある髪型でルビーよりも鮮やかな赤色の20代後半の美女だった。

 服は男性の貴族服で現代の軍人が着る、礼服みたいな感じ。

 左胸の上には勲章だろうバッジがモリモリしている。

 ただ、驚異はAランク相当で、あまり膨らんでいない。


 貴族麗人は執事を置いて1人で歩いてくると、コンテナの近くに立つ俺達の前まで来た。


「初めまして。私はドワーフ王より、炎の麗人の称号を与えられているヴァイオレット・タカミヤ侯爵よ。貴方達2人に、仕事の依頼をしに来ました。よろしければ、我が家に来て聞いてくれないかしら」


「話しを聞くのはいいけど、貴方の誠意を見せて欲しい。場所の指定を、後ろにある金属の箱の中にさせてもらう」


「えっ?」

(子供? 夫婦って聞いていたけど、もしかして彼もヒト以外の種族で、既に成人している?)

「ええ……私の悩みが解決するなら、どこへなりと」


 タカミヤ侯爵は対応したのが子供の俺で驚いていたようだが、直ぐに気を取り直して返事をしてきた。

 俺達は侯爵を先導しながら、コンテナへと案内した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なっ!? なんだ、あっ、いや。今は関係ない事だ」


 ちょいちょい男言葉と丁寧な言葉が混ざってるな、この侯爵。

 コンテナに入った瞬間、LEDライトで照らされたコンテナ内部に驚いて声を出しかけた侯爵。

 しかしよほど悩みの解決が大事なのか、不要な質問は途切れ、再び歩き出した。


 ガシャン!


 自動で閉めた隠し扉にピクリと反応したが、ほぼ無反応でついてきた。

 中々精神力のある人だ。


 実は滅茶苦茶デカイこのコンテナ。

 縦と高さが10メートルで、横幅は40メートルもある。

 奥まで行く必要もないので、かなり手前で応接セットを出す。


 3人がけのソファーふたつを、向かい合うように設置。

 間には低いテーブルとティーセット。

 誰も淹れてないのにカップに満たされている紅茶。

 侯爵に着席を促して、俺達も対面に座る。


「ありがとう」


 紅茶を一口飲んでから、侯爵は話し始めた。


「ドワーフの国で同族の男を探すのは難しいのに、ほうぼうから貴族の格だの行き遅れだのってダメ出しされて、相手が居ないの。貴方達がギルドに大量の登録をしたのは確認しているわ。それほどのアイデアがあるなら、もしかしたら私を結婚に導くヒントがあるかもって。それで藁にも縋る思いで来てみたのよ」


 ………………………………想像の何倍も、難しい話しだった。

 だって俺には恋愛経験もなければ、婚活経験もないのだから。

 かといって、既に俺はこの話しを解決したいと思ってしまった。

 俺も前世ではティアを育てた期間以外は、同年代の女子とコミュニケーションとった事がなかったし、恋人が居ないからって煽られ言い返せないのは辛い。


「侯爵。俺も、恋人が居ないまま何十年も過ごしました。だから貴方の悩みは理解出来ていると思います。結婚した後も夫と幸せに過ごせるような方法で、貴方の未来の夫を探しましょう。俺達はその手伝いに労力を惜しみません!!」


 気付けば俺の目からは余剰水分が溢れ出し、頬を濡らしていた。

 ティアに横から頭を抱きかかえられ、ハンカチで水分を拭かれる。

 侯爵も、自分で出したハンカチで涙を拭いている。


「こんなにも心細い援軍が、今までにあっただろうか」


 おぉい、言い方ぁ!!

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