月光のみちしるべ

明日花

翠のしるべ

月だけが煌々と闇を照らす深淵の空を、じっと見つめる少女がいた。

空の闇に今にも溶け込んでしまいそうなほど、儚い雰囲気を纏っているが、夜を見据える翡翠色の瞳は、月光よりも強く輝いていた。


ふと天窓から吹き込む風が急に強まった。少女は思わず目を細め、夕刻に開け放った窓に手をかけようとした。

しかしその手が宙でぶつかったのは、煌めく白金の糸束だった。


慣れた、柔らかな手触り。

少女は唇を震わせ、予感に鼓動を早めながら、視線を上げる。


「待たせて、ごめん」


髪をなびかせ月下で困ったように微笑む、何万回と希ったいつも通りの姿が在った。


翡翠がこぼれ落ちるのではないかと思われるくらい見開かれて、煌く。

耐えきれなかったひとしずくの涙が溢れる。


少女は熱くなる心のまま、花が咲くように微笑んだ。




風はもう止んでいた。

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月光のみちしるべ 明日花 @kurarisuta

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