第2話生徒会長

二章 生徒会長

 ここ、影廊高校は全校生徒900人程の所謂マンモス校というやつだ。1年が500人、2年が300人、3年が100人となっている。学年が増える毎に人数が減っているのは定期的に行われている試験に落ちて退学させられたり、厳しい訓練に耐えることが出来なくなって自ら学校を辞めたりするものがいるからだ。今残っている3年生は厳しい試験や訓練を生き抜いてきた猛者と言えるだろう。実際に高校生にしてDGM(対偽影本部)の最前線で活躍している者も少なくない。この高校生の中のトップに君臨するのが3年生の影神海斗だ。その実力は本部の職員にも引けを取らないと言われている。そしてこの影神海斗は本校の生徒会会長、そしてこの学校で1番の権力があると言われている。そして、今そんな生徒会長サマがありがた〜い祝辞を述べている。

 「では最初に、1年生の諸君入学おめでとう。この中には偽影に家族が殺され、その復讐の為に入学した者や、DGMに憧れを持ち入学した者など様々な人がいると思う。実に素晴らしい。だがな、もしそんな軽い気持ちでこの学校に入った者がいるのなら今すぐ帰って僕にはあの高校は厳しすぎましたと泣きついてろ。ほら、いるんじゃないのか?」

 「凄い言い草だな。あんなのが生徒会長でいいのか?」

 「ね〜ほんと怖いよねあの人」

なんだコイツ。急に話かけてきやがった。どっかで会ったっけか?

 「なんだあんた。急に馴れ馴れしく話しかけてきやがって」

 「ん〜?いや面白いなって思って★」

 どうにもこいつの話し方は好きじゃない。チャラチャラしてるというか。

 「何がだよ」

 「だってさ、あの影神家の次期当主に向かってそんな口遣いしてたからさ?」

 このおどけたような言い方もあまり好きではない。

 「影神家?なんだそれ?」

 「ふ〜ん知らないんだ。じゃ教えてあげる影神家はね今の日本で1番の権力を持っている名家なんだ。なんでもご先祖サマがドッペルゲンガーに唯一対応出来る策を作ったとかなんとか。それとめちゃくちゃ強い。あと表には出せないような実験をしてるって噂もあるんだよ」

 「そんな家名聞いたことも無かったな…」

 「ええ〜この界隈じゃ結構有名だよ?」

 「そうなんだな。それより表には出せないような実験をしてるって何だよ」

 「あくまで噂だからね。そんなことはしてないと思うよ?」

 「お前よくそんな色んな事知ってるな。もしかしてファンか何かなのか?」

  すると小さい声で

 「誰があんな家好きになるかよ…」

 「ん?なんか言ったか?」

 「いや?別に何も言ってないけど?」

 そんな事を話していたら生徒会長サマのありがた〜い祝辞は終わり入学式は終わりに近づいていた。色々と気になる事はあったけどまぁいいか。






 入学式が終わり皆思い思いにホームルー厶が始まるまで駄弁っていた。昨日観たドラマやバラエティの話をしている。俺はというと話す相手など当然いないので眠りに徹することにした。すると興味深い事が聞こえてきた。

 「知ってる!?このクラスに影神家の人が居るって!」

 「知ってる!知ってる!まさかあの幻太郎様と同じクラスになれるなんて!」

 ほう、影神家のやつがこのクラスにいるのか。

 「才色兼備で容姿端麗!あんな人他にいないよね!」

 「テレビで引っ張りだこになるのも納得だよね!」

 テレビにも出てるのか、すげぇな。どんな奴なんだろうか。俺が本格的に眠ろうとしたとき、いろんな人が駄弁りあんなにうるさかったクラスから音が消えた。俺はびっくりして周りを見渡した。皆時間が止まったみたいにある1点を見つめている。俺も皆の目線の先を見てみた。そこには奴がいた。

 「あっれれ〜?君、同じクラスだったんだね?」

 先の入学式のとき、俺に影神家の事について色々話してくれた人だ。にしてもなんで周りの奴らはこんなにも動かないんだ?ん?ちょっと待てよ?才色兼備で容姿端麗…まさかコイツが…!

 「さっきぶりだねー!まさか同じクラスとは思わなかったよ、俺の名前は影神幻太郎よろしく!君は?」

 まさかコイツが本当に影神家の人間だとは思わなかった。しかもよりにもよって同じクラスかよ。めんどくせーな。ここは穏便に…。

 「そんなの知ってどうする?」

 俺は自分の思いつく1番の解決策で答えた。すると

 「え〜なんか冷たい〜なんでそんなに冷たくするのさ〜!」

 これは選択肢をミスってしまったか?めんどくせぇな。

 「別にそこまで仲良くないだろ俺たち。接点があるとすればさっきの入学式で話した位じゃねぇか」

 俺はぶっきらぼうにそう答えた。 

 「え〜?僕たちもう友達でしょ?それに、僕は友達になりたいな♪」

 俺の態度など気にする様子もなく幻太郎は軽い口調で言ってきた。やっぱりこの話し方は好きじゃない。

 「俺は友達を作りにここに来たわけじゃない。大体お前の話し方はあまり好きじゃない。つまりだ、俺とお前は一生友達になれないって事だよ」

 「僕悲しいな〜」

 幻太郎はいつも通りの口調で言ってくる

 「こんなことを言われてもまだ口調を変える気はないんだな」

 「そんな事言われても僕の個性だしな〜」

 「俺は個性が何だのとか言ってる奴は嫌いなんだ」

 「そうなんだ。そんな事より君凄いね。僕にそんな話し方してくる人初めてだよ」

 「なんだ?権力を行使して俺を死刑にする気か?」

 俺は嘲るようにそう答えた。すると頭に一瞬衝撃が走った。壁に頭を押し付けられたのだ。

 「俺をあんな奴らと一緒にすんじゃねぇよ。たとえ君でも殺しちゃうよ?」

 その瞬間本当に空間が凍ったような感じだった。口調が変わり雰囲気が変わった幻太郎に皆恐怖していたのだ。ただ一人を除いて。

 「俺、そっちの口調のほうが好きだぞ?そっちに変えたらどうだ?それに何でそんなに怒ってんだよ」

 「教えてやるよ俺はあの家がこの世で一番大嫌いなんだ。権力を行使して人をおもちゃみたいに殺したりして人の命を何だと思ってるんだ」

 幻太郎は怒りが隠しきれないと言わんばかりに俺を押しつける手を強めた。そろそろ痛いな。

 「おい、そろそろ痛い。離せ」

 「……はっ!ごめん!僕今何してた?」

 なんと、記憶が消えてるのか?

 「俺の事を思いっきり壁に押し付けてたよ」

 「そっかごめんね?僕あの家の奴らと一緒にされるとどうも虫酸が走るんだ。あんな屑と思われたくなくてね」

 「自分の家のことをそんな風に言っていいのか?」

 「いいんだよ。僕もそれなりに強い力を持ってるしね」

 「そうなのか」

 

キーンコーンカーンコーン

 丁度いいタイミングで下校を知らせる鐘がなる。特にすることもないし、アイツに絡まれたくないすぐに帰ろうと、思っていた俺が馬鹿だった。

 「ねーねーもう帰っちゃうの?」

 「特にすることもないしな。後お前に絡まれたくないから」

 「なんでよー」

 幻太郎はまたもウザったらしく絡んでくる。ウザさで言えば夜寝てるとき耳元で飛ぶ蚊くらいウザい。

 「朝言っただろ俺はお前みたいな話し方が嫌いなんだ。キレたときの口調のほうが好きだぞ?」

 「そう言われてもねぇ…」

 「またキレるか?」

 笑いを含みながら俺は言った。

 「やだよまた君を傷つけちゃうからね。そういえばさぁ、こんだけ話してるのに僕君の名前知らないんだよね?」

 「俺の名前か?晋太郎だよ」

 「嘘はいけないなぁ〜式守アキくん」

 「何で知ってるんだよ、それとなんで聞いた」

 「腐っても影神家の人間だよ?情報は入ってくるんだ。聞いた理由は君がどういう人か確かめるためだよ」

 「何で確かめるんだよ」

 「特に深い意味はないよ」

 嘘クセェな…まぁいい俺は早く帰りたい。

 「俺帰りたいからかえっていい?」

 「ああ、ごめんねいいよ帰っても。妹ちゃんも待ってるでしょ?」

 コイツ妹のことも知ってるのかよ。情報屋とかそういうの通り越してストーカー並だぞこりゃ。

 「じゃあ帰るからな」

 「うん、ばいば〜い」

 俺は後ろは向かずに手だけ振った。





 慣れない通学路を帰りやっと家にたどり着いたときは7時過ぎだった。アイツと話してなければ良かったな。俺は家の中に入る為、ドアノブに手をかけた。すると中からものすごい音の足音が聞こえる。扉を開けた瞬間、腹に鈍い衝撃が走る。またか、と思いながら俺はそれを見る。

 「にぃにお帰りー!ずっと待ってたんだよ?」

 「まぁ色々あったんだよ。」

 「ふ〜んそうだったんだ。それで高校はどうだった?イケメンはいた?」

 「どうだったも何も、とんでもない奴に絡まれたよ。影神幻太郎って奴にな」

 「影神幻太郎…って!まさかあの幻太郎様!?」

 妹が俺の耳元で叫んでくる。うるせぇな。近所迷惑だろ。

 「うるさい。それよりなんだ、幻太郎様って」

 「にぃに知らないの?時代遅れだね〜。幻太郎様はね今をときめくイケメン俳優さんなんだよ」

 そういやクラスのやつがそんな事言ってたような気がするな…俳優とか興味無いから知らなかったな。

 「そんな凄い奴だったのか…」

 「そうなんだよ!」

 妹が自慢げに言ってくる。何でお前が得意げなんだよ。

 「何でお前が得意げなんだよ」

 「えっへへ〜」

 咲夜は頬を緩めて幸せそうに言う。何だかんだこいつにはいつも世話になってるから今度会わせてやろうか。

 「そんなに好きなら今度会わせてやろうか?」

 「ええっいいの!?」

 「ん?ああ、あいつが良いって言ったらな」

 「やったー!」

 すると咲夜は凄い上機嫌になった。どんな服で会おうかな〜とか、メイクどうしようとか言っている。

 「そうだ!今から夜ご飯作るね〜」

 「まだ作ってなかったのかよ…」

 「えへへ。色々とありまして」

 「そうかじゃあ俺は先に風呂入ってるぞ」

 「は〜い」


 

 俺はその後風呂に入り、夜ご飯を食べたあと慣れない土地に来たせいかすぐに眠りについて………

 「にぃにー!寝たら死ぬぞー!」

 「うるせぇ!俺はもう疲れてんだ!」

 「いいじゃ〜んもっと学校のこと聞かせてよ〜」

 「いつでもいいだろそんなもん!俺は寝る!」

 俺は布団をものすごい勢いで被った。すると、咲夜は布団を取ろうとしてくる。ウザい、ウザすぎる。

 「ああもう!幻太郎のこと呼ばねぇぞ!」

 「そっそれだけは〜」

 「じゃあ俺を寝かせてくれ!」

 「仕方ないなじゃあ明日ね?」

 「あ、そうだ。このマンションに引っ越してきた人がいるみたいだから挨拶きたらちゃんとしてね?」

 咲夜はそう言うと俺の部屋から出ていった。やっと寝れる…。やっと…俺はすぐ眠ってしまった。





 外は喧騒に包まれビルや車の光で綺麗に輝いている。この影廊街は眠ることを知らない。この街には歓楽街や中華街などまぁ、たくさんある。そんな中静寂に包まれた廃ビルの階段を登っていく一人の少女がいた…。

 「死んじゃうって言ったのに…寝ちゃったね」

 少女は悲しそうに呟く。とても、とても悲しそうに…。

 「やっと来たのね?兄さんは寝ちゃった?」

 「うん…」

 「あなた、怯えて来ないかと思っていたわ?」

 「これでお兄ちゃんは殺さないんだよね?」

 「そうよ。ああ、素晴らしい兄妹愛!ああ!ああ!」

 涎が光を反射して輝いている。

 「じゃあ今から殺すわよ?」

 本当は死にたくなんかない。もっと生きて素敵な恋をして素敵な生活をしたかった。でも守るため…

 「苦しまないように殺し…」

 少女が言い終わる前に紅い華が咲いた。壁や地面が紅く染まり、月明かりに照らされて怪しげに光っている。

 「やっと、やっと本物を殺せた!ははっあはははは!私は完全になれる!」

 甲高く不快な声が周りに響いた。

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偽影 akushizu252 @akushizu252

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