偽影

akushizu252

第1話新しい生活

プロローグ


ドッペルゲンガーという存在を知っているだろうか。自分そっくりの分身のようなものだ。ドッペルゲンガーに会うと死ぬとか、肉体から霊魂が分離したものだとか様々な逸話がある。これはそんなドッペルゲンガー通称偽影に抵抗した者達の話である。


 

 「僕は死ぬのかこんな所で!?嫌、嫌だ!」

 もう一人の影の自分がナイフを振りかざしてくる。赤い目が凄く美しく見える。死なんていうものはなんてあっけないんだろう。今までの出来事が滝の流れのような勢いで頭の中を駆け巡る。これが走馬灯ってやつか。

 「死ね」

 鈍い音が鳴り響く。しかし、不思議と痛みは感じなかった。

 「大丈夫か?ガキンチョ」

 「え?」

 いつの間にか影は消えていた。

 「その様子じゃ大丈夫だな。じゃ帰るか」

 「え?えっと、ありがとうございます!」

 「ん?ああ仕事だからな」

 その背中にはDGM(対偽影本部)のマークが描かれていた。それからだろうか、俺がDGMに憧れたのは。



 ジリリリリリリリリ!

 「またこの夢か…」

 窓から突き刺す朝の光が眩しい。俺は時計を止めて二度寝をしようと…

 「にぃに起きろーー!死ぬぞー!」

 妹が俺の上に乗っかり、俺のパジャマの胸ぐらを掴んでものすごい勢いで揺らしてくる。この速さを形容するなら戦闘機位の速さだ。いや、それは言い過ぎたな。妹が騎乗位になって俺に乗っかってくるも全然興奮しない。

 「もう起きてる…だから俺の胸ぐらを掴むのをやめてくれ咲夜。そろそろ兄ちゃん首もげそう」

 胸ぐらを揺らすのに夢中なのか、咲夜はその手を緩めない。

 「痛い…痛いって!」

 「わぁ起きてたんだね!それなら最初から言ってよ〜」

 「俺はさっきから言ってたのだが…」

 「え?そうだった?」

 この頭の悪そうな可愛そうな子がこの俺、式守アキの妹、式守咲夜だ。

 「もう朝ごはんできちゃってるからささっと食べて高校行ってきてね!転校初日に遅刻とかしたら浮いちゃうでしょ?」

 「はぁ入学式は9時からだぞ?今は7時だ」

 俺は鳴り止まった時計を指差して言った。すると驚いた様子で

 「えぇっ!そうだったの?」

 「そうだ、だから俺は寝る!」

 「だめーー!寝たら死ぬって言ったでしょ?」

 また首がもげそうな勢いで揺らしてくる。例えるなら戦t…おっと既視感が。

 「わかった!わかったから!首もげる!」

 「最初からそうしてればよかったんだよ〜」

 コイツぶん殴ってやろうか。まぁいいや。

 「俺は着替えるから部屋から出ろ」 

 「は〜い」

 俺は対偽影人員を養成している高校に入学するためにこの影廊街にやってきたのだ。俺が入学する影廊高校は中学校からエスカレーターで進める高校だ。つまり高校から入る俺は実質転校生のようなものなのだ。この高校からは数多くのDGM(対偽影本部)のプロフェッショナルが生み出されている。子供のとき、俺のことを助けてくれたあの人もここの出身らしい。俺はあの人に憧れてこの高校に来たんだ。

 この影廊街は人口5万人程の大きな街だ。この中の半分程が偽影だと言われている。着替え終わった俺は朝ごはんを食べるために部屋の外に出た。

 「にぃに高校に入ったら彼女位つくって紹介してよね〜?」

 「俺は彼女をつくるために高校に行く訳じゃない。DGMに入るために行くんだ。彼女なんてつくってる時間ないね。」

 「え〜?ほんとはほしいんでしょ?」

 「そんなこと…ない。」

 「ふ〜ん?」

 このままだと面倒くさいことになりそうだから俺はそろそろ学校に行くことにした

 「俺そろそろ学校行くから。片付けといて」

 「え〜?逃げるのかな〜?」

 「そんな安い挑発には乗らんぞ」

 「は〜い」

 まったく…昔はもっと純粋で可愛かったのにな。今が可愛くないわけじゃないけど。そんな事を思いながら俺は玄関の扉を開けた。俺は初めて来た街の街並みに戸惑いつつ俺の向かうべき場所、影廊高校へと向かった


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