俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その13

■□■□異世界3日目■□■□


■プルプルしてますねん。プルプルしてますねん。

・異世界3日目 9:30

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俺とBBAは焼きおにぎりを食った。

うまかった。


一方ペットたちは、朝から肉を喰った。

見てるコッチが胃もたれしそうだった。


つーかさ。ペットの食事量ってハンパねぇのな。

50kgの肉をペロッと喰らい尽くしやがったぞコイツら。


しかも朝食だけでだぞ?

1日分の食糧のつもりで確保した肉が、まさかの完売御礼だった。


特にウィリアムの喰いっぷりが凄まじかった。

少なく見積もっても、7割はアイツの腹の中に消えたぞ。


つまり35kg。ウィリアムだけで35kgだぞ35kg。

流石はポニーサイズ。食欲もハンパねぇな!


でもウィリアムよ。

そんなお前に是非とも伝えたい事があるんだ。


このままだと、あっという間に太るぞお前。


もちろん太ったとしても可愛いに決まってる(断言)

コロコロ系巨大狼。ヤベェ、チョー見てぇ。


でも、そういうことじゃないんだよ (真顔)


なんつーか。

ウィリアムには、いつまでもシュッとしたイケメン狼のままでいて欲しいつーか。


より具体的に言うとだな。

お前の腰回りにあるくびれ (エロい)を守りたいんだよ。


ん?

そんな素敵なチャームポイントが搭載されてるのかって?


AFO抜かせ。当然だわ。イケメンなめんなよ。標準搭載されとるわ。飼い主に似るんだよ。


証拠の念写置いとくから、しっかり確認しろよ。飼い主に似るんだよ。


[証拠写真①:魅惑の腰回り。側面から見たところ(エロカッコイイ)]

[証拠写真②:魅惑の腰回り。背面から見たところ(エロカッコイイ)]


もふもふで、覆ったくらいじゃ、隠せない。

この圧倒的な曲線美ィィィッ!!!


見事だとは思わんかね諸君。


こんな素晴らしいものを消失させるなんて、許されるわけがないんだ。

ウィリアム。オマエだってそう思うよな?


ん?イマイチ何が言いたいか分からんって?

そうか。じゃあズバッと言うぞ。


もうちょい喰う量を減らそっか?

って提案なんだが。


なぁウィリアム。当然分かってくれるよ――。


[食後の光景①:満足モードのウィリアム。お口の周りぺろぺろ中 (イケメン)]


あぁもう可愛いんじゃぁぁぁコノヤロー。


な、なんてトラップを仕掛けてきやがるんだ……。


やめてくれ。

そんな姿見せられたら、食事制限なんてヒドイこと言えなくなっちゃうだろ……。


だがしかし。


男には、心を鬼にせねばならぬ時がある。

そしてそれは今だ。


そう。全ては魅惑のくびれを守る為。

いざ尋常に。ウィリアム覚悟だぞ。


[食後の光景②:お腹いっぱいでゴキケンなウィリアム。しっぽフリフリバッサバサ(イケメン)]


あぁもう可愛いんじゃぁぁぁコノヤロー(2回目)


もう、どうでもいい気がして来た。

もう、どうでもいい気がして来た。


多少お腹がポッコリしたってよくね?

きっと可愛いって。問題ないって。


[食後の光景③:床の上に寝転んで伸びぃぃぃぃ&大きくお口を開けてあくび(イケメン)]


あぁもう可愛いんじゃぁぁぁコノヤロー(3回目)


おーしウィリアム。昼飯も腹いっぱい食えよ!

遠慮なんてするんじゃねーぞ!


ん?食事制限はどうしたって?


んなもん別にどーでもいいじゃん。

ウィリアム可愛いじゃん。だからもうどうでもいいじゃん。


ん?昼飯用の肉のストックがもうないだろって?


んなもん「ひと狩りいこうぜ!」の一声で解決だわ。

何の問題にもなりえないわ。


つー訳で。


腹ごなしも兼ねて、早速公園まで散歩 (と書いて「狩り」と読む)に向かおうと思ったんだ。


善は急げ。

勢いよく立ち上がると、全ペットに緊張が走った。


一斉に全員のお耳がピーン。どうやら俺の動向を伺っているっぽい。可愛いヤツらめ。


視線を軽く右へずらすと


「ガウガウッ!」


ウィリアムと目が合った。あと吠えられた。


と、次の瞬間。

ゴロンッと仰向けに寝転がる巨大狼。


首だけ起こしたウィリアムと目が合う。その瞳はキラキラと輝いていた。


あー……うん。


皆まで言うな。

ダイブ&わしゃわしゃして欲しいんだろ?


朝の続きをオネダリしてるに違いない。

つーか、上目づかいのイケメン狼。どうあっても可愛い。


でも、無理だ。

どんなにお前が可愛くても無理なものは無理なんだ。


何故なら俺の腕がプルプルしてるからだ。


そう。ご主人様の腕は、現在進行形で大変お疲れなのである。プルプルしてるのである。


とてもじゃないが、腹毛をわしゃわしゃするだけの腕力は残っていないのである。だってプルプルが止まらないのである。


でも「プルプルしてるから無理!」なんてカッコ悪いこと言えないじゃん?

出来る事なら、いつまでもカッコ良いご主人様のままで居たいじゃん?


さて。どうやって切り抜けるか……。


そんなズルい事を考えてたら、エドガーがトコトコ寄って来た。


どうやら食後のオヤツとして、俺の指を噛みに来たらしい。ホントにマイペースだな君は。


成長しても甘えたさん。

でもそんなところがチョー可愛い。


どうせ親指噛むんだろ?

おーけー。おーけー。好きなだけ噛んでいいぞ。


余裕ブッこいて親指を立てると、エドガーが即座に喰らいついてきた。割とガチだ。


ガブリッ。


そして、俺の余裕はキレイサッパリ消し飛ぶのであった。


どうやら俺の手は、子犬サイズのガジガジは許容できても、成犬サイズのガジガジを許容できる程、頑丈ではなかったらしい。


親指にドリルを突き立てられたような。とでも形容すべきか。朝の甘がみとはまるで違う。


思わず、無意識的にエドガーの首根っこをガッ!と押え付けてしまうレベルの大激痛だった。


頭で考えるより先に身体が動いてた。

不甲斐ない主人で誠にスマン。


あー……ビックリさせちまったよな……。


そんな自己嫌悪&反省をしつつエドガーの方を伺い見る。


と。


”む!オレ掴まれた!なんだなんだ!”


テンションアゲアゲなエドガーたんと目が合った。


結果:全然平気だったでござる。


「ガウガウッ!ガウガウッ!」

そしてこの大興奮である。


”なにすんの?ご主人様これからなにすんの?”


と、興味津々の様子でしっぽをバサバサ荒ぶらせている。


「ガウガウッ!!ガウガウッ!!」

負けじとウィリアムも大興奮だ。


仰向けの体制のままクネクネ身を捩(よじ)りつつ


”オレも!ご主人様オレも!オレも!”


と、必死にアピールされてしまった。もちろんしっぽはバッサバサである。


ダイブして欲しいウィリアム。

遊んでほしいエドガー。

そして腕プルプルの俺。


ここまで状況が整えば、この後の展開なんて1つしかないじゃん?


うん。

当然、エドガーをウィリアム目がけてブン投げてやったよね。


我ながら腕プル状態で、よく頑張ったと思う。


ん?危ない事すんなって?

AFO抜かせ。


10メートル超えのたかいたかいで遊ぶ兄弟だぞ。

俺の全力投球なんぞ屁でもねぇわ。


その証拠に見てみろ。

エドガーたんのこの嬉しそうな尻を。


[決定的瞬間①:ブン投げ直後のエドガーたんの後ろ姿(ウッヒョォォイ!)]


立ち位置的に、エドガーたんの表情が撮れなかったのだけが悔やまれるな。


その代わりと言っちゃ何だが、ウィリアムの表情はバッチリ激写できたからこっちも紹介しとくな。


[決定的瞬間②:えーーーーっ!お前が飛んでくんのーーーー!?という表情のウィリアム(そんな顔もイケメン)]


俺じゃなくてスマン。

許せウィリアム。許せ。


だって腕パンパンやねん。

だからお前の相手は無理やねん。


尚、この後2匹でむちゃくちゃバイオレンスな遊びでエキサイトしてた。


狼兄弟のジャレ合いってエグい。





■クゥーン……。

・異世界3日目 10:00

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散歩中、目を覆いたくなる痛ましい事件が起こった。

今回の日記はそれについて綴ろうと思う。


準備を整え、家を出たまではよかった。


全体の先頭はウィリアムだ。

しっぽふりふりご機嫌モード。ガウガウ鼻歌を歌いつつ元気いっぱいだ。


で、二番手はエドガーな。

こいつもしっぽふりふりご機嫌モード。大好きなお兄ちゃんと一緒なのが嬉しいらしく、力いっぱいウィリアムの周りをぐるぐるしてた。


まさにテンションアゲアゲフィーバーモード。

バター化が懸念される程の、見事なぐるぐるっぷりだった。


そんなこんなで、道中は

”エドガーが、ウィリアムに襲い掛かかる”

というイベントこそ発生したものの、それを除けば実に平和だった。


…………。


スマン。いくらなんでも誤魔化せなかったわ。

襲撃事件が勃発した時点で、平和もへったくれもねぇわ。


THE・不穏。

バリバリきな臭い。

Point Of 紛争地域。


でも仕方無かったんだ。


だって今回の襲撃って

”テンション上がり過ぎて、ガマンできなかった!”

という、エドガーのテンションに起因する事件だったからな。


んなもん、どうやって防げっていうんだよ。


あ、ちなみに誤解がないよう書いとくが

「こいつ何かやる気だな……?」って予感はしてたぞ。


たまに立ち止まって、お尻フリフリしてたしな。

圧倒的前傾姿勢。見るからに「獲物狙ってます」感が出まくってた。


けどまさか、ガチでウィリアムに襲い掛かるなんて思わんだろ。


つーかさ。


今回のウィリアム襲撃事件で改めて気付かされたんだが、うちの狼兄弟のポテンシャルが高すぎる。


何の前触れもなく超スピードで襲い掛かるエドガーもエドガーだが

その強襲を、しれーっと叩(はた)き落とすウィリアムもウィリアムだわ。


ちなみに”叩(はた)き落とす”っつても「ぺしっ」とか「ぽかっ」みたいな、ほのぼのした感じじゃねぇぞ?


「ドゴォォォッ」とか「バゴォォォッ」みたいな、極めてデンジャラスな音を立てながら、エドガーが地面に激突するんだからな?


初めて見た時は我が目を疑ったわ。

と、同時に思ったね。


アニメかよ。

ってな。


しかしそんな凄惨な状況にもかかわらず

即座に立ち上がるエドガーたん、マジ主人公タイプ。


地面に激突した次の瞬間にはピョイーンと跳ね起きて


”また叩(はた)かれた!今度はイケると思ったのに!兄ちゃんスゴイ!!”


と言わんばかりにしっぽをバサバサさせるエドガーたん、マジ愛されキャラまっしぐら。


あ、もう気付いてるとは思うが一応書いとくな。


襲撃は複数回勃発したぞ。

その数なんと7回。バトル漫画かよ。


まぁ、こんな感じで。

狼兄弟は”ある意味”いつも通りのデンジャラス&能天気っぷりだった。


その一方。

シバ達はガッチガチに緊張しまくっていた。


まず基本的に隊列が乱れない。

5人全員がキリッ!とした表情で、フォーメーションを組んで歩く姿は割と凛々しかったぞ。


[シバ写真:キリッとしたシバ達 (恐らくレア画像)]


つっても基本トコトコ歩きなので、やっぱりどこか愛嬌がある。


どんなにキリッとしても、凛々しくなりすぎない。ってのはシバ達の最大の魅力なのかもしれねぇな。


ちなみにシバ隊の先頭は工兵の2人だったぞ。

両手でスコップを構える姿は結構勇ましい。


その後ろに肩掛けカバンの補給兵2人が続き、最後尾が衛生兵ってフォーメーションだな。


常にピリピリ警戒モード。

そして、ゴブリンとかとエンカウントした瞬間、一気に戦闘モードに切り替わってたな。


ちな、戦闘モードになるとフォーメーションも変わるぞ。

それまでの密集陣形から、スバッ!と円月に開く感じだな。


もちろん先頭は工兵の2人だ。

キリリッとした表情で、スコップを正眼に構え直す。


他3人も体勢を低く落とした前傾姿勢になり「いつでも飛びかかってやるぞ!」という気概があふれ出ている。


円月に開き、各々がポーズを決めるその様は

さながら戦隊ヒーローもののキメポーズを見てるようで、さらにシバ達のカッコよさが上がってたな。


[特撮戦隊ヒーロー写真:もふもふ戦隊!シバファイブ!(キメポーズ)]


だがしかし。

そんなカッコいいキメポーズをとった、まさにその瞬間。


ズバシッ!


狼兄弟の”遠ひっかき”が炸裂し

哀れゴブリンたちは、真っ二つに引き裂かれてしまうんだけどな。


これにて戦闘終了です(真顔)


シバファイブ。キメポーズまでとったのに、まさかの出番なし。


でもシバ達はへこたれなかったぞ。


特に落胆する事もなく、キリッとした表情のまま警戒モードのフォーメーションに戻ってたからな。


ちなみに、モンスターとは4回エンカウントしたぞ。

そして、4回とも同じプロセスを経て、同じ結末を迎えたぞ。


こう書くと非常にいたたまれない気持ちになるが

逆に言うと、エンカウントの度に、ちゃんと戦闘モードに切り替わってたってことだからな。


シバファイブ真面目。

チョーおりこうさん。


俺なら2回目のエンカウントの時点で「あ、これ俺いらねぇわ」って腐ってたね。


「全部、狼兄弟に任せとけばいいじゃん」って、やさぐれてたに決まってる。


それに比べて、シバ達は偉かった。

”それでも万が一ということがありますから!”

とでも言わんばかりに、毎回やるべきことをやってたんだからな。。


俺も、そんなシバ達を感心しながら見てたんだよ。


そう。あれは4回目のエンカウントの時だった。


スバッ!とシバ達が戦闘モードに入った瞬間、真っ二つに割けるゴブリン。


シバ達は、ゴブリンが完全に消えるまで戦闘モードを解除しないので

この時も、シュイーンと消えるゴブリンをキリリッとした表情のまま見つめていた。


表情はキリリッとしたまま。スコップも正眼に構えたまま。

これまでと全く同じ状態のシバ丸から、微かに、しかし確かにこんな声が聞こえたきたんだ。


クゥーン……。


それはそれは切ない声だった。


これまで必死に押さえつけ隠してきたものが、ついに溢れ出してしまったかのような声だった。


たまんねぇわ。


だよな!やっぱツライよな!

毎回毎回「ここだ!」って時に出番を奪われてたら、そりゃクゥーン……って言いたくもなるわ。


またそれをひた隠しにするシバ達のいじらしさ。


”全然平気です!これも大事なお仕事ですから!”

的な雰囲気をかもしつつ、でも内心ではションボリしてるとか、切なすぎるだろ。


ダメだ。これはダメだ。

何とかしてシバ達にも活躍の機会を作ってやらねば。


そんな強い決意を胸に、狼兄弟を呼び寄せた。


「おーい、ウィリアム、エドガー」

「ガウガウッ!」

「ガウガウッ!」


即座に寄ってくる2匹。


もちろんコイツらも悪気があって、シバ達の活躍の機会を潰していた訳じゃない。


だから言い方に気を付けないと、今度は狼兄弟が

”俺、シバ達をションボリさせてた……”

と凹む可能性がある。うちのペット達は仲が良いのだ。


なので、それはもう慎重に”シバ達にも活躍する機会を与えてやって欲しい”という旨をお願いした。


途中オブラートに包みすぎて、狼兄弟が小首をかしげるシーンが何度かあったが、最終的には何とか乗り切った。よくやった俺。


「つー訳でだな。次はシバ達に戦ってもらうってことでいいよな?」


「ガウガウッ!」

元気イッパイ、ウィリアムたん。


”俺、分かった!お肉獲ってくる!”的な反応を見せつつ、目にも止まらぬスピードで彼方へと消えていった。思ってた反応と違う。


「ガウガウッ!」

元気イッパイ、エドガーたん。


”俺も、分かった!”的な反応を見せつつ、目にも止まらぬスピードで大好きなお兄ちゃんの後を追って消えていった。思ってた反応と違う。


どうやら『自分たちが居なくなればシバ達が活躍できるようになるじゃん!』という判断をしたらしい。想像していた結末と全然ちゃーう!


俺的には『攻撃を控える』という結論を期待してたんだが……。

コミュニケーションって難しいな。


何はともあれ舞台は整った。

これでシバ達のテンションも上がるに違いない。


おし!そんじゃ改めてよろしく頼むぞシバファイブ!


猪に追い掛け回されたり、スコップに振り回されたり、とにかくひ弱なイメージしかなかったお前たちが、どのくらい成長したかご主人様に見せてくれよな!


心配するな。いざとなったら。


……ん?


ウィリアムは居なくなった。

エドガーも居なくなった。

残ったのは俺とシバだけ。


……え?


アレ、これってちょっとピンチじゃね?

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異世界に浸食された日常の日記 シュトレスフリュ @gooffy

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