第42話

「我はダラ・オフラハーティが一子モア・オフラハーティ男爵。

 卑怯にも父を騙し討ちしたイーハ・オキャラン王。

 いざ尋常に勝負しろ」


「黙れ。

 余には何の覚えもない。

 それに王たるものが、男爵ごときがと決闘など出来るか!」


 ギャラハー騎士団は、諸侯軍が全て集まるまで攻撃を控えていた。

 それはギャラハー騎士団の強さを諸侯軍に知らしめるためだった。

 だから何時でも攻め滅ぼせるオキャラン城を包囲するだけに留めていたのだ。

 時が至り、もう待つ必要がなくなったのだ。

 オシーン皇子とマカァ姫の指揮の下で総攻撃が行われた。


 先年の戦いの後で厳重に強化された城門だったが、大魔窟の魔獣を斃して身体強化した、デグラ・ギャラハーの近衛騎士近衛徒士の攻撃に軽々と粉砕された。

 城門が内側に吹き飛び、その勢いで守備兵を叩き殺した。

 城内の各所で、ギャラハー王家に寝返った斥候が、木戸を開いて軍勢を引き入れた。


 オキャラン軍は全く抵抗出来ず、全ての城門が吹き飛ばされ、本丸まで一気に攻め込まれ、モア・オフラハーティ男爵が仇討ちの口上を述べることになった。

 だが卑怯にもイーハ・オキャラン王は自分の罪を認めず、一騎打ちに応じなかった。


「ならば仕方がない。

 皇家に対する反逆罪で皆殺しにするだけだ」


「なんだと。

 余の恩情で死罪を取り止め、流刑に留めてやった恩を忘れたか!」


 この期に及んで虚勢を張るイーハ王だったが、もう彼に味方する者はいなかった。

 多くの家臣に逃げ去られたイーハ王は、もう裸の王様だった。

 だが家臣が逃げられるはずがないのだ。

 ほとんどが城内で馬に蹴られて死んでしまった。

 城外に逃れた者も、諸侯軍に討ち取られた。


「父の敵、討ち取った!」


 モアはイーハ王を見事に討取った。

 本来なら皇都にまで引き連れて処刑すべきところを、オシーン皇子の特別な計らいで、モアの仇討ちが認められた。

 モアは見事に仇討ちを果たした。

 イーハ王の遺骸は皇都に運ばれ、晒し者にされた。


 イーハ王の一族一門は皇都に運ばれて晒し首となった。

 オキャラン王家は取り潰され、ギャラハー王家の領地として加増された。

 だがギャラハー王家の力が強くなり過ぎるのは困るので、ケビン・ギャラハー第二王子、デグラ・ギャラハー第三王子、ドナハ・ギャラハー第四王子、フィン・ギャラハー第五王子を公爵に取り立て、分割相続させた。


 当主を殺して上手く逃れたと思っていた陪臣達は、全て捕縛されて処刑された。

 強姦などの犯罪を犯していた者は、魔獣に犯されて喰われると言う極刑に処せられた。

 当初の約束が破られ、イーハ王に味方していた重臣が逃れていた諸王家と貴族士族家は、全て領地が没収された。

 ただ温情で私財の一部だけは持って逃げる事を許された。


 多くの領地が皇家直轄領とされたが、一部はオシーン皇子の側近に加増された。

 ルアン皇太子は八つ裂きの刑に処せられた。

 四肢をギャラハー馬に繋がれ、引き裂かれると言う極刑だった。

 オシーン皇太子は直ぐに皇帝陛下に即位された。

 そしてマカァ姫と末永く幸せに暮らされた。

 

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婚約破棄戦争 克全 @dokatu

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