第41話

「使者殿。

 本当にそれで許してもらえるのですか」


「本当です。

 まさかとはお思うが、コナン王が嘘をつくと疑っておられるのか。

 今の言葉をコナン王の言伝えしたら、それこそこの館の者も、国元の者も皆殺しになりますぞ」


「申し訳ございません。

 決してコナン王様を疑ったわけではないのです。

 どうかコナン王様にはどうか御内密の御願い申し上げます」


 コナン王は、オシーン皇子の願いを聞いて、皇都の諸王家と貴族士族家に使者を送り、降伏臣従を勧めた。

 今迄散々皇家を蔑ろにしてきたのだ。

 家を潰されて当然の所を、当主とイーハ王派の家臣を処刑した上で、イーハ王討伐に軍を出す事で許すと言う条件の使者を送ったのだ。


 当主は死ぬのが嫌でコナン王と戦おうとした。

 だが当主が腐っているなら、家臣も同じ様に腐っている。

 皇帝陛下に忠誠を尽くさず、逆に蔑ろにしていた当主の家臣は、当然主君である当主を蔑ろにするのだ。


 自分達陪臣までは敵味方の判断ができないと高をくくり、当主と配下の小者を大量に殺し、コナン王の命令に従った振りをした。

 若殿や正室達には、殿は家のため一門一族の為に自害したと報告した。

 そして今度は家を飛び越えて、皇帝陛下やコナン王に取り入ろうとして、国元と皇都の兵を総動員して、イーハ王討伐に参陣した。


 そこからの流れは速かった。

 皇都は皇家騎士団と徒士団が厳重に護り固めた。

 今迄皇家に非道を働いた諸王家と貴族士族家は、皇都を追放となり領地に引き籠る事になった。

 彼らはオシーン皇子が皇太子に復位し、コナン王が宰相となった時のことを恐れ、動員出来る限りの領民兵を率いてイーハ王討伐軍に加わった。


 諸侯軍の軍令は厳格だった。

 皇家騎士団徒士団から監軍が差し向けられ、進軍途上の領地領民に負担をかけないように、厳命されていた。

 どの諸侯もコナン王が恐ろしかった。

 ここで命に叛いたら、それを理由に皆殺しにされ、領地を召し上げられるのが明白だったからだ。


 皇国中の諸王家や貴族士族家の軍勢が、オキャラン城を包囲した。

 イーハ王には何の手も打てなかった。

 イーハ王は見切り時を誤ったのだ。

 オシーン皇子の才能を認めた時点で改心すべきだったのだ。

 だがそれが出来なかった。


 せめてルアン皇太子が捕虜になった時点で降伏すべきだった。

 自殺すべきだった。

 そうすれば、自分は死ぬことになっても、オキャランの血統だけは残ったかもしれないのだ。

 だがその決断が出来なかった。

 

 そしていよいよギャラハー騎士団の総攻撃が始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る