第40話

「オシーン様、御会いしとうございました」


「僕もだよ、マカァ。

 もう二度と君を離さないよ」


「幸せです。

 オシーン様」


 熱烈な再会を果たし、その日の内に結ばれた。

 そのまま大魔窟で新婚生活を送りたい二人だったが、それが許される立場ではなかった。

 翌日早々大魔窟の全戦力を率いて出陣した。

 その知らせは、伝書鷹を使って皇都とギャラハー王都に知らされた。

 大魔窟周辺の皇国直轄領は勿論、貴族領士族領にも伝令が走った。


 大魔窟周辺の貴族士族は、城に籠って出てこなかった。

 戦っても勝てない事が分かっていたからだ。

 だからと言って味方するのも怖かった。

 ギャラハー軍が強力無比な事は知っていたが、イーハ王も怖かったのだ。

 どちらに味方するのも怖かったから、進撃するオシーン皇子軍を追撃する事もなかった。


 ギャラハー王国からは、第二王子のケビン・ギャラハーが騎士団を率いた出陣した。

 怒涛の勢いでイーハ王の籠るオキャラン王国を目指した。

 その強さは先年同様で、立ちはだかるイーハ王派の貴族士族軍を鎧袖一触で粉砕した。

 包囲殲滅する必要はなかった。

 立ち塞がる者だけを叩き殺した。


 だがそれだけで、追撃して追い首を取る事もないのに、騎士全員と徒士の大半を討ち取っていた。

 逃げ延びた徒士は、最初から戦場から逃げていた者だけだった。

 無理矢理徴兵された領民は、向かって行った者だけが殺されてしまった。

 これだけは可哀想だったが、仕方がなった。

 だが逃げた者やその場で蹲った者は、無視されて生き残ることが出来た。


 イーハ王は何の手も打てなかった。

 いや、予想していた最悪を超えていた。

 ルアン皇太子が負ける事は想定していたが、捕虜になる事は想定していなかった。

 ルアン皇太子は恨み骨髄に徹する相手だ。

 オシーン皇子やマカァ姫が殺すはずだと思い込んでいた。


 だが最悪以上の状態となってしまった。

 オシーン皇子とマカァ姫が、ルアン皇太子を捕虜にしたと皇都に知らせてきたのだ。

 これではルアン皇太子を廃太子にしてからでなければ、第三皇子以下を擁立する事も出来なくなった。

 この状態でルアン皇太子の廃太子を皇帝陛下が認めるはずもない。


 イーハ王は皇都の一味に連絡を取り、皇帝陛下を人質に取る事にした。

 ところがその前にコナン王が動いた。

 自国の皇都駐屯兵だけではなく、皇家直轄騎士団と徒士団を動員して、イーハ王派の皇都館を包囲したのだ。

 

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