5章
第39話
「姫様。
ルアンが近付いて来ております」
「ようやく来たわね。
予定通りやるわよ」
「「「「「は」」」」」
マカァ姫は最初から囮の心算だった。
自分が皇国内で暴れ回り、徐々に大魔窟に近づけば、必ずルアン皇太子が自分で襲い掛かって来ると想定していた。
その時には、捕まえて人質にする策を考えていた。
捕まえられなければ、容赦せずに殺す心算だった。
予想外にルアン皇太子が慎重だったり、イーハ王がルアン皇太子を上手くコントロールした場合は、オシーン皇子と合流して戦う心算だった。
オシーン皇子に叛意がないのなら、穏やかに暮らしてもいいと思っていた。
だがそうはならなかった。
やはりルアン皇太子は愚かだった。
皇都にいた頃からの取り巻きと、金と権力で集められるゴロツキ共を率いて、意気揚々とマカァ姫を追いかけてきた。
屑の集団だが、中には悪知恵の働く者もいる。
マカァ姫追撃の途上にある貴族士族領から、多くの将兵を強制的に出陣させた。
いや、兵力だけではない。
兵糧や軍資金が必要だと言って、無理矢理徴発したのだ。
それだけならまだしも、領内の女子供を嬲り者にしたのだ。
許し難い事だった。
その事を伝書鷹を使って知ったマカァ姫は、少しでも領民の被害を抑えるべく、自分達からルアン皇太子軍に近づいて行った。
「ヒィヒィヒィィィン」
皇太子軍にはイーハ王が掻き集めた軍馬がいた。
わずかながらギャラハー馬もいたが、マカァ姫愛馬の命令に従った。
いや、ギャラハー馬だけではなく、全ての馬がマカァ姫愛馬の命令通りに暴れ出した。
背に乗るルアン皇太子や騎士を振り落とし、落馬した者を踏み殺していった。
哀れルアン皇太子はギャラハー馬に踏み潰され、瀕死の重体となった。
取り巻きやゴロツキ共も半死半生だった。
可哀想だが、無理矢理徴兵された兵も踏み潰された。
領民兵は手当てをしてやった。
取り巻きやゴロツキ共が領民に犯した凶行を知っていたマカァ姫は、彼らを野ざらしにする事にした。
なかには貴族士族の子弟もいたが、獣に喰い殺させる事にした。
彼らに相応しい死に方だろう。
生きたまま獣に身体を喰い千切られ、鳥に眼を突かれるのだ。
その恐怖と激痛は、彼らが犯してきた罪に相応しい。
万が一にも彼らが生き延びないように、自由にさせていたギャラハー馬に見張らせた、
ルアン皇太子だけは死なない程度に手当てして、急いでオシーン皇子のいる大魔窟に向かった。
今度は寄り道することなく、真直ぐ急いで向かった。
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