第42話 武水別神社

 屋代駅で降りた拓也は、駅前でタクシーを拾った。


 「何処まで行きますか?」

 「ええっと、たけ・・・、あれ、武なんとか神社とかいう所?」

 「もしかして武水別たけみずわけ神社ですか?」

 「あ、そう、それ!」

 「分かりました。」


 そういって運転手はタクシーのメーターを下げ出発した。

タクシーから流れ去る景色を拓也はボ~っとして見ていた。

しばらくして川に差し掛かった。


 「運転手さん、この川は?」

 「千曲川ですよ?」

 「ああ、千曲川かぁ~、前に台風で大変でしたよね。」

 「ええ、今も復旧工事をしていますよ。」

 「そうなんだ・・。」


 そういえば千曲川って、新潟では信濃川とか言っていなかったっけ?

一本の川なのに二つも名前があるなんて贅沢じゃね?

などと事を考える。


 駅からタクシーに乗ってから10分程した頃であろうか・・。


 「もうすぐつきますよ。」


 運転手にそう言われ、後部座席から前方をみるとコンクリートでできた鳥居が見えた。

その鳥居を通して境内らしきものが見える。


 あれ? この道路は神社でドン詰まりなのか?


 そう思ったとき、対向車が鳥居に対し右横を向いた形で突然現れた。


 ああ、なるほど、そういう事か、と納得した。

道路は鳥居をくぐり、迂回うかいをするように曲がりくねっていた。

建ち並ぶ家で道路がどのように続いているか分からない。

L字型なのか、クランクなのかは。

それほど鳥居を潜った道は神社の手前で急激に曲がっていた。


 車が通るこの道は昔は小さな参道だったのだろう。

それを時代の流れとともに拡張し舗装をしたんだろうな、と、漠然と思った。

それなら曲がりくねった道を利用せずに、新たに道を作れば良かっただろうに、などと無責任にとりとめのない事を考える。


 このように雑念的思いつき、場合により妄想を考える時は、疲れている時だ。

まあ、ここ数日の伸也と、今日の不審者扱いされた事を考えると無理もない話しである。


 タクシーは鳥居を潜る前、路側帯が広くなっている道ばたに停止した。

拓也はカードで料金を払い、タクシーを降りる。


 鳥居の傍から道路を挟み境内を除く。


 「結構、大きな神社だよね・・。」


 拓也は鳥居を潜り右手に神社を見ながら道沿いに進む。

道路はクランクとなっていて、神社の脇に沿って走っている。

一直線の片側一車線の道路だ。


 神社を斜め横から眺めた。

コンクリートの柱を立てたような塀で境内は仕切られていた。

そして道路を挟んで反対側にはホテルや飲食店が建ち並んでいる。


 すこし眺めた後、拓也は道路を渡り神社の正面入り口に戻る。

入り口には小さな太鼓橋があった。

そして太鼓橋の直ぐ脇に人が境内に入れるよう舗装された平らな舗装道がある。

太鼓橋は結構急な湾曲で人が渡るにはキツそうだ。


 この太鼓橋はなんなのだろう?


 神社の入り口に小さな川があることから、昔は太鼓橋しかなかったのではないだろうか?

今ある太鼓橋はコンクリートのため、昔の橋の面影を再現したものであろう。


 まさか神様専用の橋とかじゃないよね?


 でも、太鼓橋かぁ、渡ってみようかな?


 そう思い太鼓橋の前に行き、そこを渡ろうした。

すると通りかかった小学生にじっと見られれる。


 ふ~ん、ここを渡る気なんだ。

いい大人なのに。


 そんな声が聞こえたような気がしてなんとなく咳払いをし、太鼓橋を渡らずに横の道を使って境内に入った。

数メートル歩いて拓也は突然に声を上げた。


 「あっ、いけね! 境内に入る前にお辞儀するのを忘れた!」


 そして一瞬立ち止まって考える。


 う~ん、やっぱあまり神社に参拝しないからお参りの仕方なんて身につかないよな~・・。

うん、今日は良しとしよう。

次回は忘れないよに・・、うん、自分に期待をしよう!


 じゃあ、神様に会いに行こう!

そう思ったが何気なく左手に顔を向けた。

そこには、小さな建屋があり甘酒とあった。

それに拓也は釘付けとなる。


 「甘酒かぁ、疲れには甘いものが一番だよね。」


 拓也はそう独り言ちひとりごちして、腕を組んだ。

それとほぼ同時に、うん、糖分を取るべきだ! と、一人芝居をし納得する。


 拓也はその店に入った。

どうやら客は他にはいないようだ。


 「いらっしゃいませ。」


 店員の女性に声をかけられた。


 「あの、甘酒をお願いします。」

 「はい、甘酒ですね。」


 店員は注文を確認すると、店の奥に入っていった。

暫くするとお盆に湯飲みと思われる陶器を乗せ持ってくる。


 「お待たせしました。」

 「ありがとう。」


 拓也はテーブルに置かれた湯飲みを手に取る。

温かい・・・。

このなんともいえない暖かさが嬉しい。

陶器独特の感触も相まって、ホッコリとした。


 湯飲みをのぞくと米粒がある。


 「あれ、この甘酒・・・。」

 「どうかしましたか?」

 「あの・・お米が沢山入ってますね。」

 「ああ、これは米麹で作られた甘酒ですからね。」

 「へぇ~、そうなんだ、あまり甘酒は飲まないんだけどさ。

前、お寺かなんかで飲んだものとは違うなと。」

 「ああ、それは酒粕をかしたものですね。」

 「そうなんだ。」


 一口、口に含む。


 甘い・・・。

でも、くどい甘さではなかった。

しばらく店を一人で切り回しているらしい女性と何気ない会話をして店を出た。


 境内は来たときと同じように閑散としていた。

あらためて境内を見回して大きな境内だと感じた。

まあ、大きいといっても首都圏にある有名な神社ほどではない。

だが、地方としては大きな神社だ。


 拓也は散策しながら境内をユックリと歩きはじめた。

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御神託 キャットウォーク @nyannyakonyan

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