第1話 新しい日常

「梨恵はどこがいいと思う?」

前の席の綾に不意に聞かれて思わず体がビクッとした。

「何の話だっけ?」

外の景色を見ていたため、話を聞いておらず笑顔で今の会話の内容を聞いた。

「もー、今日の始業式の後、クラスの皆とどこに行くのかって話だよー」

「・・・・そうだったね。私はカラオケとかがいいな」

今日、4月2日は私立神縄高校の始業式。私たちは晴れて高校二年生なったのだ。

HRのチャイムが鳴り教室の前のドアから若い男の担任の先生が入って来た。

「これから、始業式を始めるから速やかに体育館に移動しなさい。」

その言葉を聞き次々と生徒が移動していく。

「梨恵行こ」

綾から誘いを受け私も体育館に移動した。廊下に出た時に窓から入ってきた風邪は4月にしては冷たい風だった。



私、天倉理恵はどこにでもいるただの女子高生だ。漫画のヒロインのような金髪で誰もが羨むような美貌の持ち主ではない。ロングの黒髪に白くもなく黒くもない肌。ただのモブキャラでしかない。周りの人間関係も普通でありきたりな学校生活を送っている。ただつまらない訳ではない、、友達と話すのは楽しいし部活を頑張っているし、うちの学校は有名な進学校でもある。でも、物足りないのだ。私には小さいころからの夢があるのだ。私は小さい時から白馬の王子様が来ること待ち望んでいるのである。



「そんな子供みたいな夢いつまでみてるの?私たちも今日から高校2年生なんだよ。いい加減に現実見なよ」

始業式の後、神縄高校2年4組は親睦会として駅前のカラオケに向かうことになった。その移動中に綾が飽きれた顔でそんなことを言ってきた。

「そんなことないよ絶対に現れるはずだよ」

私は強い声で白馬の王子様は来ると断言をした。

「そんな昭和の小学生の夢だよ。今は平成だよ?へ・い・せ・い。大体さぁ非現実的すぎるよ」

「時代なんて関係ないよ。それに綾みたいな人に非現実的とか言われてたくないよ」

霧川綾はまるでマンガのヒロインのような容姿をしている。透き通る白い肌に高い身長、そして男なら必ず二度見するスタイル。そんな神の最高傑作のような女にたいして理恵は反論した。

「それはどういう意味よー」

綾は笑いながら理恵のほっぺをつつきながら言う。

そんな、くだらない話をしていると目的のカラオケ店についていた。

「それじゃあ、みんな最低でも1曲は歌うように。好きなだけ歌い。好きなだけ食べて飲んで盛り上がろう」

学級委員の挨拶から始まり、親睦会はどんどん進んでいく。理恵は自分の番が来る少し前にあること気づいた。

「あれ、、、財布どこにしまったんだっけ」

「どうしたの理恵?」

「財布どこかに落としたみたいだから、ちょっと外を探してくるね」

綾に財布を無くしたことを伝え、財布を探しに理恵は外に出て来るときに通った道を戻り始めた。


外を探して10分くらいたった時、理恵は廃墟の前に自分の財布につけていた招き猫のストラップが落ちているの見つけた。

「なんでこんなところに落ちているのかな。・・・まさかこの中に」

冷たい風がする廃墟の方を見つめ財布が中なのかもしれないと思い。

「そんな訳ないよね。こんなところ来たことないし」

ここにはあるはずがないと思いながらも自然と体が廃墟に向かっていた。脳は行くことを拒んでいた。だが体は止まろうとしない。

「し、失礼しまーす。誰かいますかー?」

ゆっくりと重く冷たいさびたドアを開け、中に人がいないか慎重に確認しながら入っていった。すると10mほど先にあるテーブルの上に父から高校入学でもらった紺色の財布があるのが確認できた。

「よかったー。・・・でもなんでこんなところにあるんだろ」

財布が見つかったことに安堵しながらも一度も来たことがない場所に財布が落ちていることに疑問を持ち周り見渡すと階段からナニかが近づいてくるのに理恵は気づいた。

(もしかしてここの所有者さんかな?勝手に入ったこと怒られるかも)

理恵は自分が怒られかもしれないと思いながらも中々降りてこないことを不思議に思った。

「そこにいるのは誰ですか?」

理恵は恐怖しながら、コン、コンと音を立てながら階段を降りてくるナニかに尋ねた。

「僕の名前は山本だよ。君に用があったからこんな形でだが君がここに来るように仕向けさせてもらったんだよ」

「え?それってどういう意味なん・・・・・・」

理恵は途中から恐怖のあまり声を出すことができなっかた。山本と名乗る見た目は美少年の男は白い髪で、きれいな青色の目。・・・そして額にあるもう一つの目。その三つ目の顔を見て理恵は彼が人間ではないとすぐさま理解した。

「恐怖するのは仕方ない、でも僕にはあまり時間がないんだよ。だから今から言う僕のお願いを聞いてほしい。」

「・・・な、何をして欲しいの?」

理恵はなんとか出した小さくかすれた声で聞き返す。

「・・・・君に僕を取り込んで欲しいんだ。」

理恵はその言葉の意味をすぐには理解できなかった。

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妖回録 庄野 @MOneMOne

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