2日『手紙』
「びん、ある?」
「あるよ。なんに使うの?」
「ちがうの。ジャムのびんじゃなくてもっと長いの」
「ワインの瓶ならあるけど…」
「ふたが閉まるのがいい」
「じゃこれは?」
「うん!これ!ありがとう!」
「ねぇおかあさん、びんって水にうくの?」
「浮くよ。水を入れずにちゃんと蓋を閉めたらね」
「ふふふ、そっか」
「何を入れるの?」
「ひみつ!」
「さっき書いてたお手紙?」
「ひみつだって!」
ジリリリリと目覚ましが鳴り響いた。
随分と懐かしい夢を見た。すっかり忘れていたが、あの頃は海に手紙を流せば、彼に届くと信じていたのだ。波が彼の元に運んでくれると。
幼い私は、字は人間の産み出したものなんて知らなくて、きっと彼が読んで、返事をくれるものだと思っていた。
だから彼からの返事を受けとるために、幾度も海に通いたがって両親を困らせていた。
そもそも瓶のような軽いものを海に流しても、大抵岸に戻ってくるだけなのに。
そう言えば、あの瓶は戻ってこなかったな。
誰かが拾ったのだろうか?それともゴミとして回収されたのだろうか?
いや、でも、もしかしたら…………。
ねぇ、私はもう何を書いたのか覚えていないけど、幼い私が拙い字で書いたそれはきっと…。
Orcinus @dormir
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