第3話 さよなら運転!

10月9日いつも通り仕事が終わり石炭と水を炭水車に補給をして機関庫に戻ると多くの整備士が居た。ゴオォォ…と身体からは鉄が軋む音が機関庫に響き身体止まった。そして体の隅々まで点検が始まりあちこちに791号の身体にはつけられたことの無いような色鮮やかな装飾や身体についた各パーツなどがいつもより丁寧かつ綺麗に装飾されていく。そして夜通しで釜の火は落とされる事は無く耐えず燃え続け朝を迎えた、今日の791号はとても機嫌が良くいつもより貪欲に石炭と水を喰らうそして体のあちこちにつけられた美しい装飾を誇らしげに身に纏い堂々とまた操車場へと向かった、いつも牽引する貨車達では無く、これまた小綺麗に磨かれ、装飾もしてある客車にゆっくりと誘導されながら近づく、ガチャン!鉄と鉄がぶつかり合う音が車両同士の間で鳴ると791号の気持ちはさらに高ぶり、機関士が運転を行なっているが急いでホームへ向かいたい衝動に駆られた。ホームに入線すると隣にはピカピカの白と青のラインが入った新幹線もこれまた出発を待つ東京駅という事で最後のSL列車が出発すると人はホームに溢れかえり客車にもたちまち乗客がすぐに乗り込み、出発を待つ。

発車時刻が来て、ゆっくりと動いているか分からないスピードで動き出すと同時にホームの人達に負けないくらいのとても大きな汽笛が東京駅に鳴り響いた。ボォォォォォォーーー!!

いつもより長く力強い汽笛は気持ちの良いくらい迫力があり、なり終わると同時に人々は(ありがとうー!)(気をつけて!)などと声を送るそれもまた791号にとっては今までにはない気持ちの良いものに感じた。動輪や足回りにいつも以上に力が入り吐き出す蒸気で周り一体は白煙に包まれた、発車してすぐに791号はゆっくり加速して行きたちまち横を走る電車を追い抜き爆煙をあげて力走した。


そして、さよなら運転が終わり装飾も外され釜の火も落とされ炭水車は空になった、長い機関車生命が終わったのだ、新鶴見機関区に来るまでも何度も機関区を歩き渡り続けたが役目が終わり二度と身体に火は宿される事もなく、力強い汽笛を上げることも、煙をモクモクも吐き走る事はないと思い電気機関車に連結され廃車置場に連れて行かれた……。

ナンバープレート(機関車の型式や製造番号を示すプレート)を始め身体のあちこちから部品が取られていく、そして身体が部品が無くなり動かなくなった791号はバラバラにされ、鉄屑になるのを待つゴミになってしまったのだ数日後に解体されてしまった791号は感情もなにも無くただのゴミになってしまったのだ。



しかし…………




まだレールを踏んでいる感覚がある身体にも自然と熱さはあり身体の機関が動いている感覚は791号には確かに残っていたのだ。

レールは少し伸びているがしかし途中で終わりその先は砂利しかない、そんな中バケツを両手に急いで走ってくる人が見えた……そして見るなり、この!!と、とても冷たく少し汚れた水が車輪にかかり791号は驚いたが少年は、逆にD51が何故ここに居るのか、何で有火で森の中で機関士無しにいるのか分からなくなっていた。


D51よ何でお前がこんな所にいるんだ?ここはお前がいた日本では無く、異世界という非現実的な場所なんだぞ。と少年は791号に喋りかける。

俺はあの現実世界がとても辛いで、毎日いじめや暴力、非人道的なことを受け引きこもりになり自殺をはかったんだ。そしたら何故かここにいて今はすぐそこの街にいるんだ。

と語りかけてくる少年に791号は、自分も電化の波に押され廃車になったが何故ここに自分がいて何の為にここに送られたのかが分からないと思った。791号はもう一度願った。

線路があれば客や荷物を運びここで働ける、

この少年がもし、始めて物である私の気持ちが分かるなら伝わってほしい。そう願った。

私はこの世界に何故やってきたのか分からないがこの溢れ出す力を余すことなく全力で使い。人々の役にもう一度立ちたいと、自分の体に寄りかかる少年に伝えられたならと願った。

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D51791新たなる旅路 @hero4970

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