第2話 さよなら運転に思いをはせる

万博が開かれた年、1970年関東エリア含め新鶴見機関区などでは電化工事が進みSL達は徐々に引退して行きました。

新鶴見機関区では今日もD51791は煙りを静かに吐き煙突からは黒煙を吐き出している、静かに機関庫の天井を煙で焦がす。そんな中いつもと同じように機関士達が791号の近くにより運転席に鞄を置くと、黙々と点検作業が始まった。しばらくたち791号の身体は今にも走り出しそうな時に3人の運転士達は話を始めた。

なぁ、もうすぐ関東エリアでは蒸気機関車は走らないらしい。寂しいもんだなー、昔は日本全国どこの鉄道に行っても汽車はいたさ。

2人の機関士は炭水車にもたれかかり話をする。

しかしこの791号が東京駅を出る最後の汽車になるとは思いもせんかったな……。

長い間、汽車を扱い仕事をしてきたがもうすぐそれも終わりってことさ本当に寂しいもんだ。俺には嫁も子供もいるが、汽車っていうものは本当に手がかかるし、頑固者だと来て運転するにも快適とはいえ難い……しかしこいつを運転するのも時期終わると考えるとさらに愛着ってのが湧くなぁ……。そう言うと1人の機関士が釜に石炭をくべる手からスコップを791に置くと整備用の布で791号の前面を丁寧に磨き、小さな声で、ありがとよぉと何度も何度も小さな手に握りしめられた布で791の身体を擦った。

その時791はいつも機関士に愛情深く声をかけられ整備されているのを分かってはいたがその時は嬉しい気持ちが反面とても喜ばしいとも思えない複雑な気持ちであった。

そしていつもと同じように操車場にて貨車を取り何事もなかったように意気揚々と貨物列車を牽引したのである

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る