ひとりごと

みももも

あいつらは一人では何もできないが、俺は違う

 あいつらは一人では何もできないが、俺は違う。

 そう思っていた。

 いや、今にして思えば強がっていただけなのだろう。

 しかし実際には、結局俺も一人で生きていくことはできないようだ。

 現実問題として、国を離れて母国語の通じない空間に放り込まれて俺は一人きりになり、そして己自身の無力さに打ちひしがれている。

 日本という集団の中で俺は、一人きりで生きているようで、実際には周りに支えられて生きていた。

 大なり小なりはあるけれどこんな私でも周りから影響を受け、周りに影響を与えながら生きながらえていたのだ。

 そんなことを実感して約一ヶ月。


 海外に行って学んだのは、外国語でも、外国人とのコミュニケーションの取り方でもなく。

 集団に所属することの意味、集団に依存してしまうことの無意味さだった。


 海外に行っても、本当に一人きりだったのは最初のうちだけだった。

 特に私が参加したのは、各国から「英語を学習する」という目的で集まった少年少女たちだったからというのもあるのかもしれない。

 言ってしまえば他の国から来た少年少女たちも、日本から来た私と比べて英語力に大差はなかった。

 結果的に、みんな拙い英語を必死にひねり出し合って、ろくに会話の通じない友達も何人かできた。

 日本にいた時そんなにコミュ力高くない方だった私みたいな人間でも簡単に友達ができたんだから、多分そんなに難しくないことなんじゃないかな……。

 いや、なんの保証もないけれど。

 ちなみに、日本人が外国人にイメージするほど、コミュ力にも大差はなかったように感じる。

 リーダー格の人はいるし、それに迎合する金魚の糞みたいな人もいた。


 別に、友達を作るのに苦労することは……特になかったような気がする。


 つまり何が言いたいかっていうと。


 例えば君が、いじめに苦しんでいるとしよう。

 安心したまえ、君がいるその集団は、唯一無二の社会ということはない。

 勇気を持って一歩踏み出せば、驚くほど世界は君に優しく接してくれるだろう。


 苦しさを知って世界へと飛び出した君は、同じ苦しみを持つ人と出会うだろう。

 言葉が通じない世界でも、人と人とは仲良くなれるんだから。

 言葉が通じる君に、それができないわけがない。


 君が今所属しているのは、世界ではない。社会だ。

 あくまで一つの社会にすぎない。

 世界はその外に、無限と思えるほどに広がっている。


 たとえ周りから社会不適合と言われようとも。

 決して世界不適合というわけではない。


 ……世界不適合者。

 かっこいいな、それ。なんかそのテーマで小説書けそう。

 書かないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとりごと みももも @mimomomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る