第4話 製作

「よし、これで..いいかな?」

「ん..!んん...!!」

「嘘でしょ..?」

尋ねた刑事は縛られて、椅子になった


「口まで塞ぐ事ある!?」

「ダメだった?

大きく喚き散らしそうだからさぁ。」

確かに身体を強く揺さ振り抵抗している、これでは声も上げるだろう。

「ん..んんっ!!」

「五月蝿い、静かにしててよ。

折角宅配員に持って来させたのにさ」

「宅配員..?」

「そ、そこらのホームレスのおじさんだけどね。便利だよ、失う物が無い人ってのは」

「……!..」不覚であった。

疑う生業の刑事が情報を疑わず、鵜呑みにした結果がこれだ。

「なんでこんな事するのよぉ!」

「君そればっかだね。

決まってんじゃん、欲しいから取り寄せたのよ。材料に一つ〝正義〟が欲しいと思ってさ?」

作品のアクセントとして、市民の味方ですらも手にかける悪辣さも、あくまで創作活動の一環。犯罪意識など皆無

「さて、どうイジろうかな〜。」

煽りではなく好奇心、湧き立つ躍動の感覚が彼を掻き立てる。

「どうなっても知らないから..!」

「君も同じになるんだよ?

..まぁでもそうか、そうだね。」


警察署内

「揃ったか。」

一旦話を持ち寄り回収するべく署に帰還し情報整理を行う為点呼を取る。

「片桐!」「はい!」

 「嬢島」  「います。」

「...遠藤はどうした?」

街に聞き込みをしにいった遠藤がいない事に気付く。

「..見当たりませんね」

「何処に居る?

...ダメだ、携帯も繋がらん。」

「またですか、あの人..」

遠藤は度々携帯の電源を切り、単独行動を取る癖があった。

「仕方ない、探してくる」

「探すって..無茶ですよ!

どれだけ広いと思ってるんですか⁉︎」

『プルルル..』「携帯?」

嬢島の携帯が鳴り一度不安を削いで割り止める。


「..え?」「どうした」

「佐伯夏帆さんが

行方不明になったって。」

「はぁ?」「誰からの電話だ..!?」

 「非通知...。」

姿の無い何かが、影で蠢いている。

「とにかく探せ!

佐伯さんも、遠藤もだ..!」

「はいっ!」

アテも無く出動し、見えるものを探す

視覚に全ての神経を注ぎ凝らして。


「おお..!いや、待てよ?

ん〜...どうだろうなぁ、違うか。」

眠らせた宅配物に血抜きの模型を並べ白骨の腕を当てがい何やら吟味を繰り返している。

「..何してんの?

 ていうか何それ。」

「え、これ?

男用のモデルだよ、やっぱ警察の象徴っていったら拳銃だと思うからさ。腕に持たせて目立つ処に置きたいんだよね。」

「悪趣味..。」「否定はダメだよ?」

作品のパーツの位置設定などを決める為各種身体の部位を骨として残してある。今は右腕を使用する為その骨を。

「ちなみにこれ女性用ね。

細っそいよねホント」


『ピンポーン』「え、何?」

霞の道に連なる客人。

誰だと聞くほど人は来ないが

「刑事さんの知り合い?」

「知らないわよ..」

そろりと窓に近付いて鍵のみを開け放置する。すると一人でに扉は開き


「見〜つけた、私のお友達♪」

 「えっ...⁉︎」 「あれ、君..。」

誰より近くも遠ざかった人。

漸く迎えに来た。

「夏帆...!」

「やっと会えた〜、探したよ〜?」

「夏帆、ダメ!

早く逃げて、じゃないと...」

「………」 「..夏帆?」

友人は目の前を通り変態の元へ。

まるで此方が見えていないかのように

「私の親友♪」 「んー?」

 

街は騒ぐ、市民を囲う鳥籠ごと。

 「いたか?」

「いません..!」「こっちも全然」

この頃目星は消えていた。

思考からも記憶からも、人を隠し、足跡を散らすその事から着いた道の名が

〝霞通り〟

「もう一度探すぞ!」「はい..!」


忘れられた街道は人をまた消していく

「はぁ..!はぁ...!あはっ♪」

 「あーあーもう。」「嘘...⁉︎」

人形の横に、人形がぐたり。

「でーきた!これでいいの?」

「やっぱり見た事あると思ったら、最近僕に付き纏う人でしょ。

なんでメッタ刺しすんの?」

「貴方の為だよ。友達のタッメ〜!」

「ひっ..!」

「次は、アレだよね?」

新鮮な血の付着した刃先が睨み、ジリジリと距離を詰める。


「こないで、こないで!..あぁっ!」

「大丈夫?」

縛られてるのを忘れていた。しかしそれより怖いのは男が後ろへ回り込み、腕の拘束を説いた事だ。

「なんでこんな事するのよっ!」

「喋んな!

お前はこの為に呼ばれたんだよ!!」

「この為に..?」

女は理解した。

何故ここにいるのか、自分は何なのか

それは口より先に身体に移り蠢き、それが眼に宿る頃、目の前には血塗れのかつての友と無機質な赤い刃物のみがあった

「言ってた通りだぁ..!

女の人の腕ってすっごい細いね!」


その夜霞通りでは家事が起き、一つの家が全焼した。中には人はおらず、の家屋や飾りが燃えたのみ。朝には公園で、一人の刑事と女の死体が見つかった。

パーツは弄られず、傍のもう一つの血抜きの死体に〝題名偽善者〟とのみ書かれていた。

家の住人だったものは行方不明。

その日と同じ日に消えた女子大生も、未だ行方はわからず。

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余暇の駄作 アリエッティ @56513

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