第3話 訪問
「はい?」
「こんにちは、捜査一課の御堂です」
「うん、刑事さん?」
厳格な印象と堅物な振る舞い、何か大きな力に守られた組織の一員だと直ぐにわかった。
「ああ、少し話を聞きたい」
「話ですか..」
「……」
(なんで隠れてるんだろう。声を上げれば直ぐなのに、なんでそれをしないのだろう。何故この時を、慌てて知らずに終えようとしているのだろう?)
「フクワライって知ってますかな」
「あぁ、あの流行ってる..」
「そうだ、それがまた最近起きまして近くの公園なのですがね。」
「物騒ですねぇ..」「………」
魂胆はわかっている。
疑っているとまではいかないが、あくまで〝参考までに〟関連性を探っているのだろう。
「何故僕の処に?」
「..ここいら地区の分担でして。
霞通り、家の数が少ないでしょう?」
「...あぁ、そういう事でしたか!
確かに人気は少ないですからねぇ。」
「......」
警察は、言葉に詰まり立ち振る舞いに困ると少しずれた箇所に干渉し探ろうとしてくる。例えば生活や、個人的な情報にまで..。
「どうしてこんな所にお住まいに?」
「ん、まぁ..人付き合いが苦手でしてね。ひっそりと構えた訳ですよ。」
「でもこうして私と話せている」
「訪ねてきた客人だからですよ?
自分から招こうとは思いません。」
「職業は?」
「職業ですか、なんですかねぇ..。
適切な言葉がわかりませんが、強いて言えば『表現者』ですかね。」
「芸術家、という事ですか?」
「芸術家って程に確立されているかは分かりませんが、判断しやすければそれで宜しいかと。」
「そうですか..ではそうします。」
飄々と、大きく動かずに聞かれた事に答えるのみの対応で接する。刑事的観点で見ればどう変わるのか、際立った異常性は無しか、滞りなさ過ぎると疑いを持つか。
「では芸術家の貴方にお聞きします。
福笑いの犯人は死体と死体を掛け合わせて作品を作っている。あくまでつもりですが芸術家の観点から作品、そして製作者はどう映りますか?」
「どう映るか、ですか。
正直彼の作品とやらを真剣に見れた事が無いので正確な判断はし兼ねますが製作者に関してはそうですね..死した者を弄び加工し続けるという暴挙を行う愚者であり、病的な自己顕示欲の持ち主であると考えるのが妥当ではないでしょうか。」
「……彼?」 「はい?」
「今あなた、殺人犯の事を〝彼〟といいましたね。何故、性別が分からないのに彼と言ったのです?」
警察の注視眼、クリエイターの観察眼とは違い疑念を掬う姑息な瞳。微かな粗が残らず拾われた。
「それは一種のイメージですよ。
死体を加工すると言う事は骨を断ったり、肉を削いだりするんですよね?
ならば男性の方が効率が良いのかと勝手に..すみません、不謹慎ですよね」
「..いえ、そこまで細かく考えて下さって感謝しますよ。何かあれば、お電話下さい。」
上着のポケットから、番号の書かれた紙を出し手渡す。
「これは?」
「私の携帯番号です、また芸術的観点から話を伺う事があるかもしれないので。」
「ああ..はい、そういう事なら」
これ以上聞ける事は無いと諦めたのか連絡先を残して家を出ていった。
「なんだったのかな〜、全員にああやってんのかねあの人は。...あ、そうだ素材を元に戻さないと!」
押し込んだ荷物を漸く取り出し動かす
「……。」
(考え過ぎか、おかしな感性を持つ芸術家などごまんといる。それだけで決めつけるのは..)
大学先・道路
「先輩どうでした?」
「運転中話しかけないで..。」
「すみません。」
「...殆どが、自責の念と後悔ばかり。
それ以外は特に何も」
「普通に答えてくれるんじゃないですか。」
署に向かう帰り道に車を走らせているが、大の会議嫌いな為室内にまで話を持ち込み長引く事を恐れた。全ては回転率の向上のためだ。
「そっちは?」
「それがおかしいんですよねぇ..言われた通り姫元さんと佐伯さんの関係を大学内の学生に聞いて回ったんですけど、誰一人として仲が良かったという印象を〝持っていなかった〟んです」
「やっぱりね..」
「分かってたんですか⁉︎
それとこれも聞いた話ですが、佐伯さんが〝もう直ぐ親友が変わる〟と言ってたとか、どういう意味ですかね?」
「親友が変わる...?」
謎はより謎を生む。
「うっ、霧が深いな..!」
「入り口に差し掛かったって事だ、俺はもう行くぜ。あとはもういいだろ」
「おう..。」
霞通り迄の案内を終え、ホームレスは帰路に着く。家などないのに一体何処に帰るのか?
「確か..あそこか、結構デカいな。」
『ピンポーン』「おっ?」
「きたきた〜!」 「...何?」
「何、うーん..〝宅配便〟かなぁ?」
頼んでいた荷物が届いたみたいだ。
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