東アジア風ともヨーロッパ風ともつかない独特の世界で登場人物たちがそれぞれの始まりに辿り着く、本格的なファンタジー作品です。
感情を盛り上げるような描写が際立ってあるわけではなく、むしろ淡々としているかもしれません。しかし登場人物たちが傷つけ傷つけられながら、世界の真実や信じられる想いを見つけていく展開を読んでいると、そうした淡白さはまったく気にならなくなります。また、登場人物や脇役が嘘や恐怖、猜疑心に囚われていく過程も、世界観や物語に深み――人間臭さを与えている。結局どの種族も同じ反応をしているだけなのが、何とも言えない……。
個人的には、狼君とカラスがツボでした。狼君は龍を師匠と慕っているのが可愛いしかっこいい。カラスはむかつくし羽根をむしられちまえと思ったりしましたけど、こいつなりにやるせなさとか色々思うところはあるのでしょう。むかつきますけど。
最後に主要な登場人物たちが集結し、作品の完結でようやく壮大な物語が始まりました。ここで物語が終わるのもいいですけど、これからの彼らも見たいような気がします。