3話

「よく来たね、マル」


柔らかい笑顔のおばあちゃんが玄関に立っています。マルちゃんは、それを見ると足を早めました。


おばあちゃん、あのね。


マルちゃんは玄関に着くなり、駅にいた親切なおじさんや飴玉をくれたおばちゃんや降りる駅で教えてくれたお姉さん。ここに来るまでに出会った色んな人の話をしました。


「そうかいそうかい、色んなことがあったんだねぇ。うんうん。ほら、そこにいちゃ暑くてかなわないだろう?家におはいり。冷たいお茶でも飲みながら続きを話してくれるかい?」


おばあちゃんはマルちゃんの背中をしわくちゃな手で優しく押して、居間へと連れて行ってくれました。


「そこに荷物を下ろして少し待ってなぁ。お茶、入れてくるから。」


おばあちゃんが台所へ向かうと、マルちゃんはスゥーッと息を大きく吸いました。


木の香りがして、床の畳がミシッと音を立て、蛇口から水の出る音が聞こえました。


その時、何かの糸がプツンと切れたようにマルちゃんはクタッと座り込みました。


「マルちゃん、お茶入ったよ。」


おばあちゃんが居間に戻ると、マルちゃんがカバンを肩から下げたままスヤスヤと眠っていました。


「うんうん、疲れるよねぇ。こんなに小さいのに頑張ったねぇ。」


誰に聞かせるでもなく、小さな声でボソッと呟いて。コップを机の上に置いた後、マルちゃんの頭をしわくちゃな手で優しく撫でました。

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