孤高の人

水;雨

孤高の人

 おれはよく異世界転生をする。

 チートはデフォルト、言うことなしの無双状態だが、ひとつ、弱点がある。

 友達になったり、恋をしたり、仲間をつくったりすると、いいところでもとの世界に戻されてしまうのだ。

 世界を救うのに問題はないからこのことはスルーしていたが、ある世界で、ひとりぼっちの姫とその世界で居続けなければ救済できない事態に陥り、従った。

 相手は死ぬほど嬉しがり、どこまでも添い遂げると誓い合って口づけを交わすところでもとの世界に戻ってきてしまった。

 その度ごとにいつまでもあなたのそばに、とか、今生の縁、運命の友とか言われて戻ってくるものだから、そのうち転生するのが嫌になってきた。

 妹にふざけて「世界を救うのが嫌になってきたよ」とぼやいたらとても慈しむ笑顔で「そんなお兄ちゃんが大好きだよ。まわりの人も、そう思ってるはずだよ」とキラキラしていたのでどうにも居心地が悪くなってさんざんちゃかしてやった。

 そんなこんなである日学校で偶然、後輩の女の子が困っているところを助けてやったら、なぜかすぐに懐かれてしまった。

 中二病を患わせていて、幾多の多元宇宙の障害を乗り越えて奇跡的に巡り会えたとか言ってきたが、自然な流れでなんとなく今も学校で会話している。

 どうも相手はおれのことを前から知っているらしい。どこで会ったのだろう。今度会ったら聞いてみよう。たぶん秘密めかして教えてくれないだろうが。

 よくよく思い返してみればまわりはこんな奴ばかりだったりする。

 どいつもこいつも困ったもんだよ、まったくもう。

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孤高の人 水;雨 @Zyxt

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