傷だらけの鎧が埃を被ってしばらく経つ。

 俺は今日もセーニョ村の畑をひたすら耕していた。


 相変わらず作物の種をく予定はない。

 しかも旅の成果で、力加減を間違えると土を吹っ飛ばしてしまう。

 それをいかに抑えるかが、密かな修行となっていた。


 そうそう、村は旅に出る前よりも少しだけ賑やかになった。

 ほら、広場で追いかけっこをしている男の子と女の子がいるだろう。あのふたりは村で新しく生まれた子供である。


 そしてもうすぐ、三人目も生まれる予定だった。


 背後から『布の服』の裾をちょいちょいと引っ張られた。

 そこに立っていたのは、『ゆったりとした布の服』を着た女性だ。


 かつて勇者だった彼女は俺の手を『しらべ』、走り回る子供たちを穏やかな笑顔で見守る。

 俺は彼女の手をそっと握り返した。


「やあ! 今日はいい天気だな!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

しらべる勇者ちゃんと今日もいい天気な村人F あたりけんぽ @kenpo_h

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ