第4話 ティンプラ騎士団

『ガチッ』

「食券がセットされた!

バトル開始の合図でっす!

司会はアタクシ、MCレンゲッ!」

用意されたフィールドはうどんぶり。

こんかいは上に乗る天ぷらを決めるらしい、ってよりは力比べだ。

「さーんせんするのはコイツら♪」


「エ〜ビ天さん♪」「はん。」

「か〜き揚げさん?」 「へい?」

「最後にちく天!」 「ほい!」


「全部のっけりゃいいって?

そりゃナンセンス、選ばれし物が乗れるのよ〜。そういうシステム!」

なに歌ってんだあのレンゲ太郎。

「わかりゃ〜早速、レッツファイ!」

いきなりかよ、レディーとか言って...

「よそ見するなんし!」「うおっ」

「かき揚げが、勝手に飛ぶな!」

「コイツが言う事聞いた事無ぇだろ」

「お前までかちく天!」

かき揚げは足技、ちく天は棒術、素手じゃ圧倒的にリーチが足りねぇ。

「だからよそ見するなんし!」

「うるせぇなぁもうっ!」

「コッチも忘れんなよ?」「あぁ!」

前から後ろから何なんだ!?

昔っからコイツらはそうだっ!


あれはまだオレが海から上がった駆け出しの天プラだった頃...

「おや、海老フライかい?

こりゃまた敵が増えそうだね。」

「勝手に敵視すんな..!」

あの頃からかき揚げは態度がでかく、岩石の上でふんぞりかえってた。

「おっとエビかー!

なんか遠くは感じねぇな。」

逆にちく天は軽くて馴れ馴れしい感じだったな、今もそうだが。元の育ちが海同士だから話しやすかったのかもな


「結局今と何も変わらなねぇがよ」

オレ達三人は幾度となく争った。

どいつが一番の天ぷらか何て言ってな

オレは戦う気は無かった。

元々海のイザコザが嫌で衣を着けたのに、何で外でも戦わなきゃならねぇ?

「だけど世の中は残酷だ。」

何処にいっても逃げ場を設けてはくれねぇ、力があれば試される。

「無知とか無力をどれだけ羨んだか、できるなら変わってくれとまで..!」


仲良くしようとは言わねぇ、せめて...

「静かに平穏に、うどんの上にいさせてくれ。」

「何か言ったわいな?」

「話し半分も聞いてねぇけど?」

「言うだけ無駄か、チキショウがっ!」


「脚をくぐり棒を避け、拳を振るう!

やはり不利か、例えるなら左右に穿つ槍と矛にカイザーナックルを打ちつけるようなものだ!」

「分かりにくい事言うな!」

しかし確かに長さが邪魔だな。

「鍋から落ちちゃえよ!」

「調子こくな..ちくわがぁっ!」

「あっ!」「まず一人。」


「おーっと脱落かー!

いや、まだ生きている、鍋の外側に張り付いている!」

「しつこく行くぜぇ、暫くは登り作業だけどな..。」

粘り強さまで健在かよ!

「悪いけどちく天、アナタの出番はありんせん。ここで息の根止めやんす」

「脚を振り上げ孔雀の如く!」

「てめっ!

いつから二体一の構図になった!?」

「いつもだいたいそうだろ。」

「言うと思ったけど!」

その後はまぁ白熱だ、長い脚が飛んできてそれを避けては反撃しリーチが足らずスカされる。棒が一本減っただけ何も変わらない、労力も動作もな。


「かき揚げで蹴りって何なんだ?」

「弾ける蹴りだよ、アンタこそ海老フライで拳かい?」

「..フライじゃなくて天ぷらな。」

「どっちでもいいわいな!」

「それもそうだがよ!」

「……」

結局二人で笑ってやがる..。

やっぱり俺は...

「必要無ぇんだな!?」


「おおっとここでちく天の復活、三者三様が再びフィールドの中へ!」

もどったちくわは酒に酔ったような状態で一心不乱に襲って来た。

「どうしたちく天!」

お前はいいよなぁ、タレさえ変えれば麺だけじゃなくて丼モノにも参戦できる。」

そしてかき揚げはバラエティに富み人気も高くマルチな動きを見せる。

「俺たちちくわの天ぷらはなぁ..お前たちと違ってここにかけてんだよ!」

「なんなのさちく天。

..まったくお前って奴は」

いつしか当たり前になっていた。

器用さと人気にかまけ置いてけぼりにして二人で力を重ねる事が。


「かき揚げ..」「なんだい?」

「.....」 「まさか..そういう事か。」

ホントにやるべき奴がそこにいるべきだ、目立ちたがり屋が邪魔しちゃならねぇ。

「いつでもいいよ」「ならいくぞ?」

事態は必要な奴に渡す。

「エビ天とかき揚げ同時に落下、思わぬダブルブレイクにちく天笑うか?」

「じゃあなちくわ。」

「エビ天、礼は言わねぇ..」

ただ心より、感謝する。

「バトル終了!結果はなんと!

エビとかき揚げの二強を制し這い上がったちく天の勝利!」


人が糧を得るように、食もまた何かを求め戦っている。

食事をする際敬意を払い、せめて彼等に言ってほしい。


『いただきます』と..。

                完

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