自由に生きている

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第2話 いつかのひので

その日、ぼくはいつもより一時間はやく出勤した。しかしそのまま会社に行くのではなく、あまりにも犬が遊んでくれとせがむので、申し訳ないと思いながら、カフェでコーヒーでも飲もうと思ったのだ。ほとんどそう決めていた。

朝の地下鉄は出勤ラッシュで慌ただしく、どこか苛立っているような、急いているような空気が漂っていた。


ぼくは大通駅で下車し、あらかじめ寄ると決めていたカフェに入った。いつも通りすぎるだけのカフェだった。

煙草は吸わないので禁煙席に案内された。しかし店内は煙草のにおいがくぐもっていた。そんなことはたいした問題ではない。ぼくはメニューを眺めていた。値段で決めるか、本当に飲みたいものを飲むか決めあぐねていた。

するとうしろから妙な会話が聞こえてきた。若い女の子が入ってくるなりボールペンを貸してほしいとウェイトレスに頼んでいたのだ。

わざわざ振り返らなくても声の感じでどんな女の子なのか想像できた。

たぶん急いで出てきたのだろう。

すると女の子はぼくの斜め向かいの席に座り、ヘアピンでうしろ髪をとめた。

なかなかかわいい女の子だった。

柔らかそうな髪はとても素敵だった。しかしきちんとまとめて、これから仕事に行こうというところだろう。

女の子はウィンナーコーヒーを注文し、スマホを何度も確認していた。

そのうちに足を組み、ほっそりしたきれいな足と、上品なシューズがあらわになった。

ぼくは彼女に潔さを感じた。

とても好感が持てる。

彼女とはまたこのカフェにくればまた会えるのかもしれない。しかしこのカフェには本がなかった。週刊誌と漫画ばかりで、退屈だった。

いつまでもこうしていられないとぼくは思った。

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