第39話 放課後
今日もこの時間がやってきた。口うるさいガキ共の一方通行の会話が終わった今、やっと今日が始まるといっても過言じゃない。
なんてったってこの学校で生活していくための生活費を稼がなくちゃいけないから。
こんなんだったらもっとお金大事にしとくべきだった。ストレスで暴飲暴食を繰り返さなきゃよかった。ほんと後悔。
授業のチームで討伐したクエストもお金が出るらしいが自分にはびた一文回ってこないし、だから最近は、普通よりもちょっと早く解放された後から、自由時間ぎりぎりまで採取クエストを受けることで何とか生活費を稼いでいる。
自分の実力にあった場所でとれる、実力にあったクエストを手に取りカウンターに持っていく。学生証とともに提示すればクエスト受注が完了だ。
この辺りの採取クエストなんて、金にならないからって理由で普通は手に取られないか、ほかのクエストのおまけとして受けていくかぐらいしかないんだけど、自分の実力的にはやっぱりこれが精いっぱいだった。一人で森の奥に入るの怖いし。
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町の周辺は木々が倒されていて見てくれサバンナのよう。とっても見渡しがいい。
でもちょっと歩くと下草が生えてきてさらに奥へ進むと木々が生い茂る山々というフィールドだった。自分はこの下草と木々が生い茂る境目ぐらいをいつも採取して回っている。
この辺りは高い木があたりに少ないのに、肥沃な土地らしくいい植物がいっぱい生えてるらしい。先生が言ってた!
採取する植物は10本ひとまとめにしてポーチに入れておく。そうするとギルドの人が数えやすいから助かるんだって。先生が言っていた!
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昼下がり、ぽかぽかとした日光が時折木々の間を縫って漏れ出ている。その光に吸い寄せられるようにふらふらと歩いていると、気づけばいつもより深い森に足を踏み入れていたようだ。緑がいつもよりも濃い。絵具で塗ったような緑を鼻いっぱいに吸い込めば、少しむせてしまいそうだ。
『お、 お』
『こ ちは れる』
一瞬聞こえた声に耳を傾けるとなにやら緊迫感のある語調で話す声が耳に飛び込んでくる。
思わず身をかがめてその声のほうへと近づく。
なにやら口論をしているらしかった。
『どうする。このままだと俺ら全員おっちぬぞ』
『クッソ。役立たずが。だからごみだって言ったんだろうが。こんな田舎もんをパーティーに入れるからこうなるんだ。』
『どうしてもっていうから・・・仕方なく・・・』
『まあいい。今回はこいつを犠牲にして逃げるぞ』
『あ、あぁ』
そういうと大きな足音とともに何人かがその場を離れていく。
しかし、一人だけ魔物と対峙し、戦いを続ける人が見えた。
その子は体全体にひどいけがを負っている。あざや擦り傷もそこら中にだ。
背は小柄で、ほんとファナぐらいのこどもみたいな。
その子は体を機敏に操り、手に持つナイフで魔物の足や腕、首を少しずつ確実に攻撃し続けている。自分はその様子をただ、見守るしかできなかった。
頭にふとよぎる。伸也のパーティメンバーが魔物と対峙しているときに良かれと思って手元に転がっていた石を投げたこと。
ボールよりも固くそしてごつごつした石は、伸也の思うコントロールとは大きく離れたメンバーに直撃し、危うく殺されかけたことを。
そんな思いでとともに伸也はただ固唾をのんで見守ることしかできなかった。
少しの時間がたち、魔物は地面に伏すようにして倒れこんでいる。その脇にはさっきの小柄な子が早い呼吸を繰り返しながら立っていた。
その魔物の素材を回収しているらしかった。
伸也は存在を知らせるようにとわざと大きな物音を立てて立ち上がる。
これは自分が人間であると相手に知らせ、自分の身を守るための主案である。
その物音に対して、小柄な子ははっと顔をこちらに向ける。そして一瞬顔をゆがませたかと思うと一目散に駆け出してしまった。
クラスメイトの異世界召喚に強制的に巻き込まれたんだが.....え?これで人生終わるの? ちいろ @tiiro
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