日常にあふれる娘たち

 玉露とは、茶樹に覆いをして育てた、柔らかく緑色の濃い新芽をいいます。ふくよかな香りとまろやかなうま味をもつ最高級のお茶です。

「その通りよ。でも、もうちょっと褒めてくれたっていいのよ?」

 ふふっと笑うあざとい玉露ちゃん。俺のコカンが疼く。

「ちょ、ちょっとあんたどこ押さえてんの! 変態!」

 もうダメだ。俺のコカンは暴発しちまうぜ! お茶に含まれるカフェインに勝つことなんて不可能だぜ!

 ションベンを済ませて、俺は座椅子に戻ってきた。

 プレミアム立体設計マスクの高機能フィルターは、空気中のミクロ粒子を99%カットできる高密度フィルターによりPM2.5をガードすることができます。

「お兄さん、よく知ってるね。照れるなぁ……」

 てれてれと笑う恥ずかしがり屋なマスクちゃん。俺の口が疼く。

「ちょ、ちょっとぉ! キスは無理だよぉぉ! きゃあああっ」

 問答無用。俺はマスクちゃんを拉致し、己の口に押し当てる。そしてフーフーと吐息を吹きかけ、彼女の白い肌をびちゃびちゃにする。

 コンビニに行くためだ。ウイルスが蔓延してるから。

 コンビニにから帰って来た俺は、再び座椅子に座る。

 萩の花の咲き乱れる宮城野にぽっかり浮かんだ名月をかたどった「萩●月」。ふんわりとした高級カステラでまろやかなオリジナルカスタードクリームをたっぷり包みました。

「心なごむ私の美味しさ、お届けします♡ ど、う、ぞ!」

「まずっ」

「え⁉」

 むしゃむしゃむしゃむしゃ

「あれ? あれあれあれ? 旨いぞこれ!」

「よ、よかったあぁ。もう、Pさん! アイドルを驚かすのは厳禁なんですよ? 罰としてもう一個、め、し、あ、が、れ♡」

 むしゃむしゃ

「まずっ」

「ええ⁉ また⁉」

「あれ? あ、コレやっぱり、後から旨くなるお菓子だ」

「そ、そうだったんだ。私って、大器晩成しちゃう子だったんだ」

 冬の、とある日のことである。

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三十三行の、一話で完結していくhanasi 島尾 @shimaoshimao

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