第46話 変わる世界

 僕達5人は、3ヶ月という月日を経て商業の国の首都へと到着していた。




 王国からの逃走から国境を超えて、最初の街に着いた時から首都までに掛かった期間が3ヶ月。体力がある冒険者ならば朝から夕方まで徒歩で2週間もあれば到着できる距離だろう。けれど、僕たちは途中にあるダンジョンに寄ってはそれぞれのダンジョンの最下層を目指して攻略していった為に3ヶ月もの時間が掛かったのだった。


 


 ダンジョンの最下層までの攻略は、能力と才能のある冒険者が少なくとも5人ぐらいは集まらないと容易に到達はできないと言われている。


 しかし、僕達5人の内1人が何度も最下層に到達した経験があり、何度も神の加護を受けた冒険者であり、内2人は一度だけ最下層に到達できた実績があってその時に神の加護を受けた事もある冒険者。そして、残りの2人はダンジョン攻略については初心者だけれど、能力を見れば非常に優秀で、成長する可能性も十分秘めた人材達である。この様な素晴らしい仲間が集まっていたので、僕達はダンジョン攻略を繰り返し行うことが出来た。


 


 最初に挑戦したダンジョンの最下層到達は、ダンジョンに踏み入る事が殆ど初めてであるというフィーネとトリュスに、ダンジョンに慣れてもらいながらじっくりと最下層へ向かったために、1週間程の時間が掛かった。


 と言っても、普通のパーティーならば、攻略を初めて最下層へ到達するまでには数ヶ月は必要だろうと言われているダンジョン最下層への到達なので、通常に比べれば攻略に掛かった時間はかなり短い。


 


 それから、3ヶ月は首都へ向かいつつ道中にあるダンジョンを攻略して行って商業の国にある首都へと向かったという訳だった。


 5人全員にすさまじい成長力があったので、ダンジョン攻略で最下層へ到着するたびに皆が能力アップを感じられた。


 


 基本的にはダンジョン内でモンスターを倒していれば、ある時突然に筋力がアップしたように感じられたり、突然に魔法によってモンスターにより多くのダメージを与えられるようになったと知力がアップしたと感じられるようになったりと、一気に能力がアップして成長を感じられる瞬間がある。


 所謂ゲームなどのレベルアップした! という事をこの世界では実際に体感できる。が、ずっとモンスターを狩り続けていれば成長限界と言われている能力が上がるという感覚を感じられなくなる時があって、事実ソレを感じてしまえば力や知力などは殆ど上昇しなくなってしまう。そんな事態が僕達5人には無かったので、各地のダンジョン巡りは無駄ではなかった。


 


 こんな風に、ダンジョンをクリアしていっては次の街へ行って、街に到着したら直ぐにダンジョンに直行しては挑戦する5人組は、もちろん冒険者仲間の間で有名となっていった。


 


 冒険者達に有名になったため、僕とフィーネの魔法使い組は他のパーティーによく勧誘されるようになってしまった。けれど僕はもちろん、フィーネも勧誘話が来るたびに丁重にお断りしていった。


 


 それから、更に僕達5人が有名になって来ると何十人もの人間が集まって作る名前付きの団体や隊など、パーティーよりも大きい枠で作るまとまりに5人全員が一緒に勧誘されるようになってしまったけれど、全員が全部の話を断っていった。


 


 中には強引な手口で、自分たちの団体に組み込もうと企む人間たちが居たけれど、武力ではクロッコ姉妹には勝てないし、情報戦や策略ではトリュスが事前に察知して全ての企みを潰されていった。最後の手段も僕とフィーネの魔法使い組が便利な魔法で阻止していくと、ある日を境にして勧誘はピタッと止んだ。どうやら、どんな手を使っても勧誘が成功しないだろうと冒険者の間で認識されたからだろうか。


 


 こんな風にダンジョン攻略と冒険をこなしながら生活していると、世界の状況が少しずつ変化していった。変化していく世の中に関しては、トリュスが情報を瞬時に集めてきて報告してくれるために、僕達はどのように世間が変化していったのかを明確に把握していた。


 


 その中でも一番の大きな出来事は、王国が戦争の準備をしていて他国に宣戦布告するのではないかと言う噂。


 


 国王は戦争を仕掛けるつもりは一切ないと各国に布告しているが、その言葉を信じているものは少ない。現に、王国は数カ月前から食料の買い占めに続いて、最近では軍備の増強を行っているという。もちろん、コレにはモンスターの大繁殖という出来事に備えた準備だと発表されていたが、モンスターの大繁殖が沈静化してきているという今も、軍備の増強や訓練を止めていない所を見ると、他に目的があるのは明白だった。


 


 この事実が有り、周辺国も緊張状態になっていて商人たちが非常に頑張って商機を探っているという訳だった。



「なるほど、なかなかに大変そうだ。情報を集めてくれてありがとうトリュス」

「良い」


 商業の国の首都にある宿屋から女性陣が泊まるために借りた一部屋。そこに僕も加えて他の4人の仲間が集って、トリュスからの定期報告を聞いていた。


 僕は、トリュスに情報を集めてくれたお礼を言いながら考える。王国が最近ずっと変わらず軍備を整え準備しているという情報を受けて、やはり戦争になるかも、と漠然としながら思う。


 


「今は国の間を行き来するのは危ないかもしれないわね」


 一緒に聞いていたシモーネさんが意見を言う。確かに、今の状況では周辺国へ向かって国境を超えて行くのは難しいかもしれない。


 


「となると他の国に向かわずに、この国にある街とかダンジョンを見て回るか?」

「首都に来るまでの修行を考えると、国にあるダンジョンを見て回ったら更に魔法使いとしての能力が上がりそうです」


 今後の方針は未だに決まっていないので、どうするべきかフレデリカさんが提案。フィーネがソレに賛成する。修行のダンジョン巡りも良いけれど、何か1つ変化がほしい。首都へ来るまでの3ヶ月間を考えて、非常に有意義だとは思うが代わり映えがなさすぎる。


 そう思って、何かいい案は無いか5人で話し合っている時だった。


 


 コンッ、コンッと2回、扉をノックする音が部屋に響いた。

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【未完】転生エルフは魔法使い~価値観あべこべの変わった世界~ キョウキョウ @kyoukyou

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