第45話 5人の成果と、王国の異変

 フィーネと2人で街にある市場を回り、ダンジョンへ挑んだ時に必要そうな物を買い揃えてから、宿へと戻って来た。僕達2人が戻って来た時には既にフレデリカさんとシモーネさんの2人は先に宿へと戻って来ていた。




 


 クロッコ姉妹は僕達の帰りを待ってくれて居たようで、宿の出入口に近い場所に設置されているテーブル、朝食や夕食を宿泊者が戴くときに使う食堂のような場所、の一席に座っていた。そして、帰ってきた僕達をいち早く見つけて、手を上げて合図をしてくれた。


 


「こっちだ!」


 フレデリカさんの呼び声に、買い物から帰ってきた僕達2人はテーブルに近づいて行き、彼女たちと同じようにして座る。


 


「おかえり、そっちの成果はどうだった?」

「大体必要そうなものは買い揃えられたんで、後はフレデリカさん達が集めた情報を確認ですね」


 買い揃えたものは魔空間にしまってあるので、見た目には荷物も何も持ってないように見えるけれど、シッカリと目的は達成している。その事を伝えると、クロッコ姉妹は満足そうに頷いてくれた。


 


「そっちはどう?」


 席についたフィーネがフレデリカさんに向い合って成果を聞いている。出会った当初を考えると、驚くような光景だった。だけど、この一ヶ月の旅の中でフィーネとクロッコ姉妹の仲は友達程度にはなっていた。そのために、出会った当初に比べてギスギスした感じが無くなっていた。


 


「ダンジョンの情報についてはバッチリ。入場許可証も貰ってきたよ」


 フレデリカさんの手に持つ入場許可証を見て、すぐにでもダンジョンへと挑戦できる準備は完了している事が分かった。


 


「こっちのダンジョンは別段変わったところは無いらしくて、特別な前準備は必要ないそうよ」


 シモーネさんが集めてきてくれた情報について、僕達に軽く知らせてくれる。後は全員が揃ってから改めて説明してくれると言って、情報交換は終わった。


 


「それじゃ、後はトリュスが来るのを待つだけですね」


 僕のつぶやきに3人がうなずいて反応してくれる。このテーブルには今4人の人が座っている。残りの1人であるトリュスには、王国の現在の状況がどうなっているのか調べてもらっている。彼女は情報を集めるのなら1人のほうが動きやすい、1人で大丈夫と言ったので、王国の調査についてはトリュス1人に任せることになった。


 


 そしてフィーネと僕の二人組、フレデリカさんとシモーネさんの二人組づつに別れたのだった。


 


 


 しばらく4人でまったりとしながら待っていると、トリュスが宿へと戻って来た。


 


「おかえりなさい、随分と時間がかかっていたね」


 僕がそう声をかけると、トリュスはコクンと一度頷いて答えた。


 


「すこし、大変だった」


 5人全員が集まったので改めて、僕達が準備した物やこの街にあるダンジョンの情報について、そして現在の王国の状況、皆が時間をかけて集めてきた情報の共有が始まった。


 


「とりあえず、私達から」


 シモーネさんが手を上げて、先に話し始める。まずは、ダンジョン関連についてから。


 


「さっきエリオット君やフィーネにちょっとだけ話したけれど、このダンジョンについて」


 シモーネさんが冒険者ギルドに行って調べてきたこと。このダンジョンに出現するモンスターの種類や、注意するべき点、難易度などを説明してくれた。


 


「一ヶ月の旅で大体皆の能力は把握してあって、それを参考にしてみるとココの街にあるダンジョンの攻略は難しくはなさそう。じっくりと時間をかければ最下層には問題なく行けると思うわ」


 そう締めくくるシモーネさんの言葉。シモーネさんに聞いた情報通りなら、僕も同じように考えダンジョンの攻略には苦労しなさそうだと思う。


 


 シモーネさんが話し終えた次は、僕達が買い集めたダンジョンに挑戦する際に必要そうな物を報告をする。


 


「僕達が買ってきた物は、コレです」


 買ったものを紙に書き出しておいた物を3人に見せる。無駄なものを買っていないか、そして買い忘れがないかをチェックしていく。


 


「うん、大丈夫そうだ」

「おう、良いんじゃないか?」

「良い」


 シモーネさんとフレデリカさん、そしてトリュス3人の判断を受けて、とりあえずダンジョンへ潜る準備は出来たと判断。後はトリュスの報告だった。


 


「追手、問題ない」


 国境を超えて、王国からの追手については一先ず問題が無くなった。皆が一安心た頃、トリュスハもう1つの情報について話し始めた。どうやら、彼女が調べてきた物は王国からの追手についての情報だけではなかった。


 


「王国、少し変」


 トリュスは、僕の追手がどうなっているか調べるために商人が集まる飲み屋へと向かったらしいのだが、そこで少し気になる事を聞いたそうだ。


 


「王国、商人、いっぱい集まってる」


 どうやら、王国では食料品の需要が非常に高まっているらしくて、それを売るために商人が各地からたくさん食料品を買い集めて、王国へ向かっているらしい。しかし、食料品の需要が高まっているというのは、どういうことだろうか。


 


「私達が王国を出るときって、凶作のウワサとかってあったか?」


 フレデリカさんの疑問。食料品の需要が高まっているという事は、国内で食べるものが不足している事が考えられる。しかし王国では、何年間も農作物の収穫には問題なかったと聞いているし、凶作のウワサなんて事を聞いたことがなかった。王国で暮らしているときには、食料品が不足しているという実感もなかった。


 


「この一ヶ月の間になにか起こったのか、それともこれから何か起こそうとしているのか」


 フィーネが、情報から思い浮かぶ可能性を考えている。


 


「とにかく、この件は情報がまだ不足しているから今後の状況を見ていかないといけないね」


 僕がそう結論づけて話を終える。トリュスからもたらされた情報については、一先ず頭の片隅に置いておき、僕たちはダンジョンの攻略について集中することにした。

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