第3話 鏡の中の

はて?と思うショウ。


(女?今この人、僕のことオンナって言った?)


頭の中がハテナマークでいっぱいになるが、


ふと自分の体を見てもっとハテナマークでいっぱいになった。



どうして今までソレに気が付かなかったのかと言えば、

イキナリ突拍子もない事態に巻き込まれて、

自分が思ってる以上に動揺しているのかもしれないのだが、


それにしても、


自分が


どー考えても


女の子!!


になっているなんて、


あり得ないんですけど!!!



ショウは、自分の胸元にある見たこともない双丘に驚愕した。


「でけぇ!」思わず声に出してしまったほどだ。


どれぐらいデカイかって、上から足元が見えない。


軽く飛び跳ねてみると、胸の皮膚が引っ張られて痛いくらいボヨンボヨンと上下する。


服装は、あちらの世界で出かけたときに来ていたベージュの無地のパーカーとジーンズだが、

胸のことろ以外はどこもかしこもデカくて袖や裾が余りまくっていた。


「何やってんだ、女!」


水色の髪のねーちゃん(貧乳)が、挙動不審なショウを見て苛ついているようだった。


「いや、あの、えーっと…」

頭が混乱し過ぎてどうしていいか分からない。


「あのう、ボクって可愛いですか⁈」


突拍子も無いことを聞いてしまった…


その時ショウが想像したのは、自分の薄い顔にこの体が付いているという、

世にも恐ろしい状態であること。


それはとんでもなく滑稽であることは間違いない。


なんだかとても嫌だ。


水色の髪の貧乳は一瞬面を喰らっていたが、複雑な表情をしながら答えた。


「ま、一般的にいうとお前はカナリ可愛いな。

美人とゆーか、カワイイ。」


貧乳はとても真面目で正直なタイプなんだろうな、とショウは思った。


ショウは水色に連れられて白い馬に乗った。


「女、名前は?」


「名前…ショ…ショウです…」

咄嗟には偽名すら出てこなかった。


この世界的にどうなのかと思ったが、水色はふーん、と言うのみだったので、それほど酷い感じではないらしい。


「あの、あなたは?あなたの名前は?」

ショウもおずおずと聞いてみる。


「私はカナン!」


カナンは馬の腹を蹴り上げて、暗くなってきた夜道を急いだ。



まるでロールプレイングゲームの最初に出てくるような、緑が多いほのぼのとした村を通り抜け、

2人を乗せた白い馬はお城の門をくぐった。


年季の入った跳ね橋を、門番のおじいさんが閉める手前だった。


薄くてボコボコになっている鉄の鎧を着た、前歯が欠けた痩せた老人は、ニコニコしてカナンに話しかける。


「カナン、遅かったね。おや、その後ろの女の子は?」

老人はジッとショウを見た。


老人は全身色々シワシワなのに、目だけは黒くて子供のようにキラキラして、とても元気そうだ。


ショウは何となくペコリと頭を下げた。


老人は急にキリリッとして、お姫様を迎えるようにショウに頭を下げ返した。


「なんと麗しきお嬢様、御用があれば何なりとこのアクスロットにお申し付け下さい!

貴方様のお役に立てることがこの老いぼれ騎士の幸せにございます!」


自分に向かってお嬢様…聞き慣れない言葉にショウはひるむ。


「ハイハイまったく…じゃあまた後でな、アクスロット!」


(まったくじーさんの女好きにも困ったもんだ)と、ごく小さい声でつぶやきながら、水色のカナンはショウを連れて城の中に急いだ。


「とにかくお前の扱いをどうするか、私だけでは決めかねる。

祭祀長様と相談してくるからしばらくここで待っていろ。」


カナンは早口でそう言い残すと、地下の小さな部屋にショウを閉じ込めた。


「いや待って〜!頼むからこの状況を説明してぇぇぇ〜〜!」

女となった可愛らしいショウの叫び声が虚しく石の壁や床に響き渡る。


牢屋みたいな1人になって、ショウはやっと事の重大さに気付いてきた。


「うーん、待て待て待て。

これは、夢じゃないのか?夢だろう普通…


ねーちゃんと神社にいたのに、いきなり変な世界に来て、しかも女の子になってる。

で、何かやらかしたっぽくて、水色の髪のねーちゃんに捕まって、


今はお城の地下の部屋。


え?どゆこと?

てか、僕これからどーなんの?



え〜えええ〜!」


ちょっとしたパニックである。


ハッとショウは思い出した。

「そうだそうだ、たしかに絵馬には異世界に行きたいとか書いたけど、


いやまさかマジで異世界に来るなんてありえないっしょ…願い叶い過ぎ…」


ショウは無意識にパーカーのポケットをまさぐった。


何かある。


取り出してみると、それは茜神社で拾った赤いポーチだった。


「ポーチがあってもな…あ、そうだ!」


鏡があれば自分の顔が見られる!


ショウはポーチを開けた。


中には、桜色の可愛い手鏡が入っている。


「やったー!あった!」


ドキドキしながら手鏡を覗く…


どんな顔なんだろう…



女ショウの小さな手のひらの中には、


2000年に一度の美少女、と言われているアイドルより可愛い顔の女の子が映っていた…!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コスメで異世界を生き残る!ラブリーに戦え! 丸めがね @marumegane

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ