披露宴にて
ヒガシカド
披露宴にて
「それでは皆様、新郎新婦の入場です!」
拍手に包まれながら、私達は指定された座席までゆっくりと歩いた。
「おめでとう!」
「素敵よ!」
友人や親戚の声が聞こえる。私は彼らに笑顔を向けた。
予定していたウエディングケーキへの入刀は滞りなく進み、食事の運びとなった。私達は料理を口にしながら順番に各テーブルを回り、話に花を咲かせた。
「ドレス、似合ってるねえ」
「ありがとうございます。服は二人で相談して決めたんです」
「料理も美味しいよ」
「それは良かった。安心しました」
会は和やかに進んでいた。あるテーブルに来た時、そこに座っていた女性が私達に尋ねた。彼女は酒を飲み、出来上がっているようだった。
「二人はさ、なんで結婚したわけ~?」
私達は顔を見合わせて笑った。
「ええっと、何でだっけ」
「やだ~笑わせないでよ!」
彼女とその周囲の人々は大笑いした。どうやら出来上がっているのは彼女だけではないらしい。
「いや、本当に忘れてしまったんですよ。もしかして本当は、結婚なんてしていないのかも。この式自体が幻想だったりして」
「その通り」
私達の周りには、もはや華やかな式場など存在しなかった。私達は自宅の一室で向き合っている。
「全部妄想だよ、今までのは」
「あのお茶目な親戚も、楽しそうな友人も」
「そうだね。そして君も」
私は目を閉じ、孤独の中を揺蕩う。
披露宴にて ヒガシカド @nskadomsk
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