吸血鬼の『始祖』として、永遠の時を生きる吸血鬼と、どこか抜けた所がある事以外は何の変哲もない人間の少女の、甘酸っぱい物語。
登場人物の感情が、情景も相まって妙に生々しく伝わってくる。ここまでのめり込める作品は久々に出会ったと思う。
事実上の不老不死であるが故に苦悩する吸血鬼の姿も、吸血鬼な先輩を好いていながらも疎外感を感じて不安を抱える少女の姿も、リアルな泥臭さがあって美しかった。
この作品は短編(と言っても一万文字以上あり、読みごたえはかなりある)なので、今後の話が書かれる事はないが、もしできる事なら読んでみたい。