妖怪愚痴録 ～たそがれ茶屋は妖怪たちの拠り所～

004夜 いったんもめん♂

　僕はこのままの自分でいたいんです。でも、彼女が一緒に染めようって。

　いえ。派手な色にではなくて。今、白から白に染めるのが流行ってるんです。月夜に映える白に染めるのが。

　でも、僕は嫌で。このままの素朴な『一反木綿（いったんもめん）』色がよくて。できれば、彼女にもそのままでいてほしくて。

　確かに、きれいな白ではありませんけど。白さに個々の差がありますけど。このそれぞれ少し違うところがいいというか。

　染めても落とせはするらしいんですけど、結構薬品を使うみたいで。浸かりたくないんですよね。しばらく、毛羽立ちそうだし。

　もし、人間の彼女が髪を茶色にしたいって言ったとき、人間の彼氏がそのまま黒がいいって言ったら、どう思いますか？

　やっぱり、うざいですか？

　僕たちって、破れたら、一応元に戻るんですよ。染めても時間が経てば、戻ることは戻るんですけど、なかなか戻らないんです。人間の一生分以上は。僕たちからしてみれば、そうでもないんですけど。

　でも、この月夜に映える白ってやつは、薬品を使わずに戻ったっていう前例がまだないんです。最新のやつなんで。だから、こわくて。

　うざくなりたくないし。へたれとも思われなくないし。

　僕はいったいどうしたら！