イナゴ身重く横たわる

作者 고성남

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★★★ Excellent!!!

レビューは得意としておりませんけど…
スケールの大きさに反比例し、登場人物を極力少なくし、きっちりとその役割に加えて印象付けを果たしているので、とても好感が持てる。
所謂、キャラがたっていると感じる。
命のやり取りにおける描写に於いては、緊張感を感じさせ、そうでない処ではガス抜きさせるごとく『クスッ(笑)』っとさせてくれる等…作者の底を見せない程の知識と博学が裏付けされているからこそでは?と感じざるを得ない。
ここ、最近読んだ作品の中では最良で、しかも骨太の作品だと思います。意味も緊張感も、なくだらだらとした長文で売れまくっている本が数ある中で、こういった本が読み手の背筋をピンとさせる…是非とも一読を、お薦めします。

★★★ Excellent!!!

まさに自分が求めていた、否待ち望んでいたと言っても過言ではない。現代に於いて大日本帝国が存在していたのなら、こうなっていただろう。それほどに現実性が迫ってくるものがあった。陸軍、特高、内務省、道庁、その他全てにほぼ欠けはなく、何もかも緻密に練られた上にストーリーがある。個人的には杉原たかね少尉が特に印象に残ったというべきか。彼女以外にも色の濃い人物は数多く存在する。是非とも皆様にはその目で確かめて頂きたい。
ここで敢えて欲を言うのならば、帝都に鎮座する内務本省内における、北海道に対する動きや思惑の動き(?)のような描写、また剣客巡査が如何にして北海道へ派遣されることになったか、その辺りをもう少し詳しく知りたかった。なにぶん突然の登場に驚きと戸惑いを隠せなかったからである。
いずれにせよ、この時点においても最高である事は信じて疑わない。多くの読者を獲得し、作品が大きなものとなるよう、切に祈るばかりである。

★★★ Excellent!!!

この小説の特徴を言うとしたら何になるか。深く考え、追求してみても、適切な言葉が中々思い浮かばない。しかし、兎に角言える事。それは「濃い」という事である。
本作は、濃厚な世界観を背景に、魅力的な登場人物達が物語を彩る。航也、アーニャ、マヤ、高山、たかね、甘粕……。其々が強烈な、凄まじい魅力を放つ。特にたかね、彼女の強烈さは本作の中でも随一だ。なにせ、「配属将校」なる見慣れぬ肩書を持つ、日本刀を手に並み居る敵を斬り倒す陸軍少尉なのである(作中世界には銃器が明らかに存在しているのにも関わらず、だ)。現実の職制ではとうてい考えられないキャラ、としか言いようがない。その存在が、本作の特徴である「濃厚な世界観」の端的な証左ではあるまいか。