保坂さんの休日~ゴリラを食べた日~
もりくぼの小隊
保坂さんの休日~ゴリラを食べた日~
「おかあ。腹へったんすけど、お昼ごはんまだっすか?」
あたしの名前は「
「ん? なんすかこれ?」
あたしはテーブルの上に置いてある一枚の紙切れを見つけて読みました。
――――ハロー、愛しのーーーークシャリ。
うん、この文面はおとうですね。最後まで読む必要も無いのでゴミ箱にクシャクシャっとポンしましょう。眼を滑らして適当に読んだかぎり、どうやら呼んでも返事が曖昧だったので二人で映画に行ってしまったようです。
「ちっ、薄情な両親っすね。わかるっすか? これ、映画は口実でチチクリあってくる予定なんすよいい年こいて……だからあたしは邪魔なんすよね。アハハァっと」
なんだか、軽く腹が立ったので最近おかあに隠れて造ってるおとうのフレズなんたらとかいうロボットの装甲を付けた女の子のプラモデルを玄関に飾ってあげる事にしました。うん、これでよし。
「にしても、腹へったっすねぇ……」
恐らく可愛いひとり娘をほったらかして食事をしてくる程の畜生ではないと思いたいので何か買って帰ってくれるかも知れませんが、あたしのお腹は我慢できそうもありません。あたしは台所に何か無いかと物色したところ。
「ん? なんなんすかねこれ?」
戸棚の奥から赤い袋のインスタントラーメンが出てきました。パッケージには厳ついゴリラです。
「おお、これは噂の「ゴリラ的な一丁」じゃないっすか。ははーん、おとうがまた性懲りもなく隠れて買ったんすね」
おとうはいま、おかあからラーメンを禁止されています。主に健康的な意味で。うーん、これはよくないですね。よし、ここはあたしが食べてあげる事が親孝行というものでしょう。あたしはおとうの笑顔を思い浮かべながら迷わずバリッと袋を開けました。と、中身を見たら三袋も入ってますね。いや、さすがに全部は食べられません。すまんおとう。将来的におかあに殺されてください。
袋裏の作りかたを確認。どうやら、鍋を使わなくても作れるみたいです。
「へぇ、チキンのラーみたいに作れるんすね。これは意外っす。そういえば、メーカー同じだったすね」
作りかたは温めたどんぶりに麺と具、粉末スープを入れてお湯を注いで蓋をして五分待つ。五分経ったら麺をほぐして調味油を垂らせばゴリラの完成です。
あたしは早速、書いてあるとおりに作ってみました。何事もまずは基本が大事です。で、感想ですけど。
「うっ、ニンニクとニラの香りが強烈っすねぇ。さすがゴリラの名に恥じないパワフルさ。味はまあ美味いんじゃないすかね。けど、あたしにはちょっと濃すぎるからスープまでは飲めないっすわ。うーん、ちょっと水を増やして溶き卵とネギを入れてマイルドにすればあたしの好みに近いっすかね」
まあ、なんだかんだで美味しかったです。おとうありがとう。ごちそうさまでした。
「さあて、二人が帰ってくるまで掃除機でも掛けときましょうかねぇ」
……あたしは、まだこの時はわかっていませんでした。とても重大な事を忘れていたんです。
次の日の朝ーーーー
「おはよう保坂さん。今日もホモを愛でる良い1日にーーて、あら、どうしたの? あなたも風邪?」
「あ、おはようっすセンパイ。いや、これはちょっと一生の不覚といいますかなんと言いますかーー」
朝からセンパイと会ってドキリとしたあたしは口をマスクで隠しています。いえ、風邪では無いです。ただちょっと口臭的な理由で装着してます。
そうです、あれだけ強烈なニンニクとニラのラーメンなのですから、次の日に残るのは当たり前です。昨日の夜と今日の朝に歯磨きを念入りにしましたが、どうにも気になってマスクが手放せません。あのゴリラを食べるのは次の日が休みの日にしましょう。
「ーーというわけで今日は同好会にも顔は出さずに帰ります。はぁ、ゴリラ的な一丁を甘く見すぎたっす」
「……ゴリラ」
「どうしたんすかセンパ……あ」
これは、またよからぬ事を考えてますね。
「ふふ、保坂さん。そのゴリラのラーメン」
「……」
「圧倒的な……ホモね間違いない」
全く……この人は。
「今日も絶好調っすねぇセンパイ」
保坂さんの休日~ゴリラを食べた日~ もりくぼの小隊 @rasu-toru
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