ラノベというより社会派小説

性転換もの(男→女)、しかも女子中学生…。これだけ見るとハーレム物か恋愛物か、という感じですが。
 読んでみると奥底に流れる家族愛。家族とはなにか。誰が家族なのか。そも自分は誰なのか。
 「自分は春樹なのか、夏姫なのか」この主人公の悩みは人間として根源を揺さぶる恐怖だと思います。自分が何者なのかさえあやふやになり、夏樹という新たな人格を作り出し生きようとしても、春樹の脳の記憶が、夏姫の身体の記憶が邪魔をする。周りにいる家族も本当の家族であり嘘の家族であり。
 途中でラノベらしいキャッキャウフフもありますが、本題ではなくむしろキャッキャウフフした自分に自己嫌悪してさらにアイデンティティが揺らいでいってしまう主人公。
今後どうなっていくのか、気になる小説になりました。
 実際のところ、性転換(脳移植)というファンタジーを除くと小説として完成度も高く、社会的テーマ(人とはなんなのか)が全体を通して描かれ、いずれ何か賞を取りそうな作者さんと思ってます。