「なんだお前。負けたら食べられる。

 それが自然の掟だろ。諦めろ」

「いっ、嫌です。私まだ……子供も

 男との……そ、その……」

「……?メスなのか?」

俺はナイフを持つ手を引いた。


食料が逃げたら困るので

グルグル巻きにしたメスの四本足に

別のもっと高い木の上に張り直したハンモックの上で、

話を聞くことにする。本当は食いたいのだが

しかたない。俺は缶詰を一個開けて食べる。


「私たちはヘルハウンド……この辺りを支配しています」

グルグル巻きの四本足はしょげながら説明する。

「図書館には無い名前だな。犬じゃないのか?」

「人間の図書館ですね?一度見てみたいのですが

 あの壁が高くって……」

「雑魚だな。野生に生きるものなら

 あのくらい登って見せろ」


グルグル巻きの四本足は、しょげた顔をしながら

「やはり、あの壁を下りてきたのですか……」

「当たり前だ。俺は若い。そして強い。

 なんだってできる。本と映像からそう教わった」

食べている缶詰は旨いが、こいつの話は詰まらない。

さっき解体して食べた方が良かったと後悔している。


「名前を……良かったら教えてください」

「テルヒコだ。自分でつけた」

「あの……私を食べないでくれるなら

 我々の秘密をここで、お見せします……」

「つまらなかったら食べるぞ」

「……はい」

いきなり四本足の周囲に白い煙が出てきて

俺はナイフを取り出し、構える。

騙されていたら、即、食料にする。


煙が晴れると、俺の目の前には

縄でぐるぐる巻きにされた裸の獣耳と尻尾が生えた

人間が……いや、身体の形が俺と違う。

胸が二つとも出っ張っていて大きい。

これは……人間の女だ。

赤い目で黒い髪の人間の女が

恥ずかしそうに俺を見ていた。









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ファクオウとテルヒコ 弐屋 中二(にや ちゅうに @nyanchuu2000

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