森の中は何かの鳴き声が

聞こえる。

ピピとかケーッというのは

たぶん鳥の鳴き声だ。

図書館の映像で聞いたし、見た。


そして俺は

夜の森が危険だというのも知っている。

なので俺は日が暮れる前に

高い木を探して、その上に

持ってきたハンモックを

かけ、心地よい寝床をつくった。

雨は降らなそうだ。

きっとよく寝られるだろう。


気持ちよく森の夜風に吹かれ

寝ていると

沢山の獣の唸り声が

下から聞こえることに気付いた。

荷物の中からライトを取り出し

下を照らしてみる。


狼か犬?よく似ている灰色の毛で

眼が真っ赤に光っている四本足の動物たちが

俺の方を見て、唸り声をあげていた。

何となく俺は

こいつらは腹が減っていて

俺を食べたいんだろうなと感じた。


だが、俺はまだ食べられたくはない。

色んなものをもっと見たいし、知りたい。

ハンモックの下の唸り声を聞きながら

夜明けまで、放っておこうかとも考えたが

そうすると、もっと仲間を連れてこられるかもしれないし

面倒だ。


それに俺は図書館で読んだある本の言葉を

思い出していた。

"相手を食べようとするときは、逆に食べられるという覚悟も

 するのが戦いの掟だ"

……つまり、俺はあいつらに勝てば

あいつらを食べることができる。

これはいい考えかもしれない。缶詰もいつまでも

もたないだろう。


俺は唸ってくる四本足の動物たちを眺めて

どうすればあいつらを食べられるか考える。

ナイフはある。それに近くの枝を折れば

硬い棒もできそうだ。

右手にナイフ、左手に棒だな。

よしよし、相手の数は……ライトで照らしながら

数えると十匹丁度だ。


よし一匹は倒そう。そして食べよう。

俺はハンモックにライトを固定して

木の下を照らすと、そのまま飛び降りた勢いで

獣の頭を思いっきり叩いた。

「キャウン!」

という鳴き声と共にその一匹は動かなくなり

次の一匹を俺がナイフと棒で狙うと

残りの獣たちは途端に弱気な表情になり

一目散に逃げていった。


弱かったな。

でも図書館の本には

"時には逃げるのも強さだ"と書かれていた。

獣たちの選択も正しい。

よし、頂くとするか

初めての肉だ。解体の仕方は

よく分からないが、多分何とかなる。

まずは止めを刺す。


俺がナイフを獣の身体に突き刺そうとすると

獣は真っ赤な目を開けて

「食べないで……」

と何と俺に話しかけてきた。









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