第5話
私は、果物屋の前で何を買うか悩んでいた。
ドンと強い衝撃が身体に伝わり、たえきれず倒れた私。
「ちょっと!黒い服の人っ、待って、待ってよー」
走り去っていく人物を呼び止めるが走るのをやめず、遠ざかっていく。
すると、走り去っていった人物が呻き声をあげ、飛んできた。
わけが分からず頭が回らない私にキッカードさんが声をかけてきた。
「大丈夫、フィレちゃん。ごめん」
「謝らなくて、良いよ」
私は立ち上がり、飛んできた人物に近づく。
突然、さっきまでいなかった女の人が現れて、倒れている人を担ぐ。
「大丈夫、貴女。こいつは私が連れていくから。じゃあ」
「ま、待って。待ってください......お礼をさせてください」
空中に箒が出てきて、去ろうとする彼女を呼び止める。
「お礼か~、じゃ...いや貴女みたいな若い子からそんな」
30分後。
私とキッカードさんは、助けてくれた方と一緒にケーキ屋でケーキを食べていた。
「フィナーリレさんは、とても大人びてるね。まだ若いのに」
「クシュミーネさんも若くて綺麗です。私なんか、とても」
「いやいや、二人で褒めあってもらちがあかないね。食べ終わったらスリをしたこいつを受け渡しに行くよ」
私には見えないが、お金が入った袋を奪おうとした人は何かで拘束されて身動きがとれずに床に転がっている。
「クシュミーネさん、本当にありがとうございます。またお会いできたら、旅のお話を聞かせてください」
「まあ、聞かせられるような楽しい話はそんなにないけれど、良いよ」
会計を済ませ、ケーキ屋を出ると、クシュミーネさんは箒に乗って見えなくなりました。
クシュミーネさんは、紺色のローブを纏い、三角帽子を被った、魔女。
灰色の髪を三つ編みにして、綺麗な方。
少しだけ、クシュミーネさんに尋ねたいことを聞けました。
サラの冒険譚に出てくる、ある魔女のことを。しかし、収穫はあまり無かった。
私にクシュミーネさんは約束をしてくれました。また出逢う日までに情報を仕入れると。
まさか、最初の街で憧れの魔女に出逢えるなんて。興奮して、眠れなかった。
美少女しか知らない飛竜の秘密 闇野ゆかい @kouyann
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