第11話

くるくるの毛の男の子がいなくなったのはとても寒かった時だったけど、それからわたしのからだもどんどん動かなくなっていったの。


大好きだった散歩も行けないし、目の前はほとんど見えないし、音も全然聞こえなくなっちゃったの。


わたしはいつものクッションでずっと寝てるんだけど、たまにふわりふわりと優しく撫でてくれるのはわたしのことを1番古くから知ってる男の子。

パチンパチンとちょっと乱暴に撫でてくるのが一番小っちゃい人間。

おそるおそる触ってくるのが途中から来た女の人ね。


外がだいぶ暑くなってきた頃、わたしはご飯がほとんど食べられなくなって、身体を起こすこともできなくなっちゃったの。



だんだん眠くなってきて、身体の音が静かになっていくのを感じていたんだけど、身体の音が静かになるほど、遠くの方で色んな声が聞こえてきたの。


大好きなおっきい女の人、おバカなくるくるの毛の男の子、散歩道で仲良くしていたおっきい子。


みんながわたしを呼んでる気がする。

遠くにハッキリ景色が、みんなの顔が見える。身体も軽くなってる。待ってて今行くね。









生まれてから17年。精一杯生きたある犬の一生が終わりました。

家族の形が変わる中でいつも変わらずそこにいてくれてありがとう。

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ある犬の一生 タクゾウ @taku99

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