異世界転生

俺はしがないサラリーマン。金も貰えて生活こそ出来るけど毎日同じことの繰り返し。それでいいじゃないかなんて言われる贅沢な悩みかもしれない。でもさ…一回くらいは色んな人から褒められて称賛されたいんだよ!


そこでやってみたんだよ。深夜見たアニメみたいにさ、走行中のトラックに飛び込んでやった。死んだら死んだでそれまでって感じで。


そしたらさぁ…意識あるんだよ。これは転生成功でいいんだよな?

ほら…誰かの声聞こえるし…


「あなたは選ばれたのです。」


「やった!とにかく強い力お願いします!」


「勿論必ず。着実に勝利を手にできます。」


「まず貴方には、巨人、ドラゴンを仲間と共に倒してください。」


「騎士団の団長的な?」


「終わり次第トラ、コイ、星、ツバメを片付けてください。」


「ん?巨人とドラゴンに比べてショボくないですか?」


「それぞれ阪神のトラ、東洋のコイ、浜の星、神宮のツバメという強豪です。」


「それ…プロ野球、セ・リーグじゃないですか?」


「何が問題です?今すぐチーム纏めないと優勝できませんよ?」


「優勝って言いましたよね今? あとチームって。」


「勇者の復活のためには必要なんです。」


「勇者の復活。そういえばセ・リーグチーム全部出てますよね?」


「異セ界ですね。」


「カッコつけて言うな!ここ現実の野球界だろ? なぁ…巨人もドラゴンも読売と中日だろうがよ!」


「まぁそう言わずに。なんだったら異パ界もありますし。」


「パ・リーグだろそれ!? 異パ界って何も引っかかってねぇよ!」


「では異セ界でよろしいですね?」


「どっちでもいいけどさぁ…異パ界は響きがカッコ悪いし異セ界でいいよもう!」


「はい、じゃあ異セ界の怪物を倒し、勇者の復活でいいですね?」


「怪物呼ばわりはファンに怒られんぞ。」


「こうやるとファンのヤジが盛り上がるので。」


「そんなのはマリーンズの交流戦ポスターだけで十分なんだよ。」


「まぁよくそんなこと言えたなって状態で出してたりしますよね。」


「だからそういうこと言うなって!」


「でですね。異セ界の球団をすべて倒して、最下位チームを貴方のチームと取り換えてしまいましょう!」


「新チームなのね。俺たちやっぱり。」


「ええ、栄えある勇者ことブレーブスの復活を目指すのです!」


「いや!無理だろ!88年に名前変わっただけで基礎は残ってるし、しかも今のオリックスだろうが!」


「我々としては、セでもパでももう一度ブレーブスの栄光を取り戻したいのですが。」


「どっちでもよくねぇよ!パ・リーグだろ! ていうか俺セ・リーグ攻略選んじまったよ!」


「では我々阪急電鉄の命運を託します!」


「いや!NPBじゃねぇのかよ! まさかの企業!?」


「次の転生者を南海電鉄、近畿日本鉄道と戦ってやっと取れたヘッドハンティングできたんで。」


「なぁ、これいつの時代でどういう状況なんだよ!? 全部球団手放したけどその球団が別の形で残ってるから意味わかんねぇんだよ!」


「やっぱり球団あった方が副収入あるかなって。」


「最低な理由じゃねぇかよ! 近鉄とブルーウェーブスの選手の涙を忘れてんじゃねぇよ!」


「ブルーウェーブスではありません。ブレーブスです。」


「黙れ! お前んとこと近鉄が合わさって今必死に頑張ってんだよ! パ・リーグの中だと下の方だけどさ。」


「南海さんこそ要らなくないですか? ホークスなんか今最強クラスですよ?」


「知るか! そんなの運営と監督次第だろうが!」


「お願いですから新生阪急ブレーブスの監督になって、優勝してくださいよ。」


「嫌だよ! こんな腐った発想の運営とやっていけねぇよ!」


「最高の選手も用意してますんで。」


「一応聞いとくけど、誰よ?」


「中沢、大熊、高井、蓑田、長池」


「当時の選手だろそれ!全員お爺ちゃんだよ! それから高井はもういないんだよ!」


「高井だけに他界と。」


「ぶっ飛ばすぞてめぇ! 野球嘗めてんじゃねぇぞ!」


「貴方自分の事しがないサラリーマン言いましたけど、結構詳しいですよね?」


「え? あ。」


「もしかしたら貴方は来るべきものとして来たのかもしれませんね。」


「……」


「それじゃあ我らがブレーブスの監督に…愛がある貴方ならば…」


「巨人かソフトバンク目指しますね!」




(終)

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無限の鳥籠(面白短編集) 凩三十郎 @ki104violin

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