怖い話4【カーブミラー】400字以内

雨間一晴

カーブミラー

「ここ、さっきも通らなかった?」


「バカな事を言うな!」


「でも、あのカーブミラー、さっきと同じよ。柱にお札が貼ってあるやつ……」


 L字通路を二つの鏡が、曲がり角の向こうと、二人のカップルがいる通路を映し出している。オレンジ色の柱は、赤い御札おふだに埋め尽くされて赤い柱に見えた、御札に書いてある文字は見た事が無かった。

 霧がかかった住宅街は、コンクリートの塀に囲まれていて、家に入る出入口も無かった。コンクリートの壁が続く世界は、迷路に迷い込んだハムスターの様に二人を焦らせた。


「同じとは限らないだろ、相変わらず景色は変わらないし、人も居ないけど」


 二人が、カーブミラーの向こうに人が居ないのを確認して、L字通路を曲がる。


 小さな日本人形が歩いている、赤い着物に、割れた顔、腰まで伸びた黒い髪が揺れている。


 悲鳴をあげて、逃げていく二人は気付いていなかった、カーブミラーに、自分達も映っていなかった事を。

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怖い話4【カーブミラー】400字以内 雨間一晴 @AmemaHitoharu

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