第57話

 「おっちゃん、おかわり!」


 クリプッセンと別れた俺達は、居酒屋に直行していた。臨時収入が入ったこともあり、飯が進む。


 すると俺のあまりの食べっぷりに困惑したのか、イーギが質問をしてきた。


 「なァ、シイマ。」


 「どうした、イーギ?」


 「どうした、じゃねーヨ。お前、そんなに食ってるけどヨォ、金の方は大丈夫なのカ?」


 「心配すんなって、ほら。」


 そう言って俺は例の空間を再び発生させ、そこからクリプッセンから取り上げた袋を出した。


 「いやソレ、クリプッセンのやつなんジャ…?」


 「ま、いいだろ。どうせアイツ、姫なんだし。」


 そんな俺の推測に対してイーギは


 「それもそっカ!」


 と言って、酒のおかわりを頼み出した。まったく、人の金で食べる飯はうまいぜ!




 この場所で、様々な初めてを経験した。姫という立場を捨てて、色々なことができた。

 でも、所持品を盗まれることまで経験するなんて考えもつかなかったわ。今度会ったら、アイツらにキツいお仕置きをしてやるわ。


 私はそう決心しながら、周囲の安全が確保できるような場所を探していた。


 私の国とシノアはそれなりの距離がある。だから私の足でも移動に時間がかかり、何日か野宿をしていた。だから、正直なところ野宿は一人でできる。


 だからこそ、独りを余計に感じてしまう。あの二人が見張っているとはいえ、向こうから干渉してくることはない。


 「・・・ていうか、ホントに守ってくれるわよね?」

 

 最初は意気込んでいたものの、いざ真夜中の野原で一人になってみると急に孤独を感じる。なんでだろう、シノアに向かうときは寂しくなかったのに・・・


 私は全部アイツらのせいということにし、明日に備えてとっとと寝た。

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悪魔とダラダラ異世界道中 灯籠 @tourou

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