第7話 空調
ある夏の日、私は食パンを買いに行く事にした。その目的の場所としてドラッグストアとなった。何故なら過去の事だがいろいろ調べて、案外平均的に見ればスーパーマーケットよりドラッグストアの方が食パンに関しては安い事が多い。何より自宅から近いのも理由になる。
分からない事があるのだが、この店のスグ前にコンビニがある。私は問答無用でまずこのコンビニで買い物せずドラッグストアの方に行ってしまう。特例なのか?と言うと、案外ドラッグストアの近くにはコンビニがある。これものすごくコンビニ側が不利だと思うのだが、どっちが先に出来たか?が良く分からないんだ。
以前はスーパーで主に買い物をしててドラッグストアでいろいろ売っていると知ったのはごく最近の事になる。前からマツモトキヨシには入っていたのだが、何故か商品を意識した事はなかった。後で知る事になるのだが、マツモトキヨシが特別ではなく、こういう形態の薬局と言うのが全国に増えたようだ。ここ数年で初めて私はドラッグストアと言うものについて理解した。
そのためコンビニとドラッグストアがどっちが先に建ったのか?が良く分からないんだ。先ほどはちらほらあるとしたが、それはあくまで奇跡のような確率ではないって意味で稀程度の言葉は使って良い。だからその稀な重なりを意識したのが遅かったので、今となっては答えが良く分からないんだ。
ドラッグストアが後ならすべて理解できる。コンビニはかなり古い。そのためそこに残り続けたコンビニと言うのは、かなり立地条件が良い。そうやって幾つも立てて残った店と言う経営をコンビニチェーン全体でする。そのため何年も前からコンビニが建ってる場所は狙い目なんだ。そこに後からドラッグストアがやってきたと言う訳だ。
これが逆の場合さっぱり分からん。値段、品揃え、何を取ってもコンビニには不利な事ばかりだ。おまけにクオールのようなコンビニと組んでる薬局店のようなのもある。コンビニにとって薬は良く使うもので置いてない家庭の必需品で無いものなんだ。酒も昔なら店によってあったりなかったりだ。まあこのあたりの変遷を知らない世代とかも居るんだろうな。
そんなこんなで目の前にコンビニがあるドラッグストアに行く。近いといってもそこそこ距離はある。そうなるとコンビニが近くにあるんじゃない?となる。値段だけでわざわざ行くのか?となると、これが微妙な距離で同距離なら別方向にある。本当にたまたまなんだ。
そして私が密かにコンビニと比較して、これはうれしいと言うのがドラッグストアにはまだある。それが夏の暑い日の冷えた店舗となる。
んなもん、コンビニでも同じだろう?この点はスーパーマーケットも同条件かも知れない。やや店舗が大きいと言うのが良いんだ。なんと言うか、人の金と言うか、店舗が負担する冷房を堪能するという感じだ。他人の金だから良いのか?ならそれだけじゃない。なんだろうな、無駄に大量の空気を冷やしてる。これがなんとも贅沢に感じる。
安物の食パンを買いに来るくせに、無料の部分でかなりの贅沢な気分を味わえるという点が心地良い。後は感覚的で自分だけかもしれないが、私は屋根も含めて広い設備の冷えた空気は天井の低いコンビニの狭い店舗の冷えた空気と違うと感じてるんだ。どう違うのか?といわれるととても困るのだが、熱い夏の日ドアから入って浴びる空気が体全体を包み込むような感じがある。
いやコンビニでも日本人の一人ぐらい十分空気が包めてるでしょ?と言われると困るのだが、何か違うんだよな。家庭用とはどちらも全く違う。これは機械そのものが根本的に違う。だから違いがあると言っても説得力があるが、店の広さ天井の高さで違うってのは、私だけの感覚なのかな?これは自信は無いが私は違うと思うんだ。
2つの向かい合った店があるが、様々な理由からドラッグストアを選択する以外私にはありえない。
あーだこーだ考えているうちに目的のドラッグストアにたどり着いた。店に入った瞬間つい恍惚の表情を浮かべてしまう。
(あちゃ、見られてしまった…)
むふふと一人笑みを浮かべた顔を客のおばさんに見られてしまった。視線があってしまって互いに意識してしまったので、
「今日も外は暑いですねー」
「ええ、そうですね」
と笑顔で返した。これで私の表情の理由が分かったはずだ。人間不気味なのは分からないからと言うのがある。未知は人によっては期待であり、恐怖の対象となる。分かってしまえば例えTPOにそぐわない言動でもまあそれらへの抵抗は軽減される。共感を得たというほどじゃなく、相手の未知への解消が目的となったと私は勝手に思ってるのだが。どのみち笑顔の返答で、一人浮かべていたしまりの無い表情を誤魔化したのもある。
一つのカドに来た時に店員が居たため話しをした。
「パンってどこにありますか?」
大体ドラッグストアでパン類はカドにある事が多い。だが4つすべて回るのは面倒なのと、それは経験則であり絶対ではない。たまにずれてる店もあり、同系列のチェーン店でもまるで決まってない。1つは自力で探したんだよって自分への言い訳みたいなものになる。ドラッグストアは全てじゃないが、店員を放送でレジと商品の陳列に上手く使い分けてる。
だから商品の陳列のためにうろうろしてる店員が結構居るため気軽に声を掛けやすい。コンビニも基本似た仕組みだが、狭い店舗のため放送での呼び出しなどが無いから意識する事が無いのが違いなんじゃないか?と思う。気がついたらレジに飛んでくるってのを見かける人は多いと思うから。
「あちらにありますよ」
店員が案内しようとしてたから
「分かりました、後は探すので良いですよ」
すぐに同行を断わった。まあ暇でぶらぶらしてるわけじゃないんだ。商品の陳列をしてるので、いくらサービス業とはいえそこまでしてくれなくて良い。これが1つだけカドに向った言い訳の根本になる。ただあまり頻繁に来る店じゃないので覚えてないんだ。決して知ってて思い出すのが面倒で聞いてるわけじゃない。
食パンコーナーについて値段を見て、やはりコンビニよりは安いなとご満悦でかつ大体のスーパーマーケットよりは安いんだよな。多分PBのせいだと思う。スーパーでもPBはあるが、ドラッグストアはメインがPBってのが大きいんだと思う。他の食パンあまり置いてない。パン自体は豊富に非PB商品もあるのだが、食パンはPBにどのドラッグストアでもPB偏ってる気がする。細かい調査をしたわけじゃないので事実なのか?はなんとも言えないけど。
目的を果たして家に帰ろうとするが、外の熱さを思い出してブラブラとしばらく店に留まるかと思案する私だった。
ライトノベルシリーズ 逆上之助 @kakukakusika
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