からの小瓶

1:氏名(みょうじ なまえ)

　＊

　ねえ貴方、どうしてなにも書かないの？

　え？「先生」には関係ない？わたしは「先生」じゃなくて、空乃小瓶って名前があるから、それで呼んで。

　空乃先生には関係ない。うん、確かに。まあ正直関係ないけど。でもなんかその白紙のアンケートみると、昔のこと思い出すっていうか…。いやでもわたし一応名前と好きなものは埋めてたよ。めんどくさかったけど、そこはちゃんと書いたよ。

　ねえ貴方、自分に自信がないんでしょ。無個性で平凡でどうしようもない自分がいやでいやで仕方ないんだ。

　お、殴りかかってくるね。すごいな昨今の生徒は。…ねえ、縫。生徒に対してその目つきはやめてあげて。怖いから。

　えーっと、なんの話だっけ。あ、そうそう、個性がないって話だ。

　これはわたしが思ってることだから、どう判断してどう生きるかは貴方の自由だけど。

　無個性で平凡。それで自分で自分のことが嫌いになる。それって、どうして？

　誰にも必要とされないから？自分で自分が退屈になるから？人に比べて自分が劣ってると感じるから？

　わたしは、そうやって人と人を比べて、劣っているだとか価値がないだとか必要がないだとか、そういうようなことを、自分だろうと他人だろうと、判断するのは間違いだと思う。

　わたしはわたし。ただそれだけ。必要とされてないとか、選ばれないとか、そんなの関係ないんだよ。

　…え？話が長くて聞いてなかった？…それは多分、全部シノのせいだから。

　さ、とりあえず名前を書いてみて。貴方の名前。

　そこから貴方の物語が、始まるんだよ。