最終話 彼方の汽笛

 二日経った。五日が過ぎた。一週間も滞りなく、十日目もついに無事だった。車掌さんはいつ私が死ぬか教えてくれない。

 毎日起きて、今日死ぬかもと覚悟を決める。私と同じ子供達を救えるのだから、それくらいなら耐えられる。

 仕事は順調だった。むしろ、お客さんが来すぎてるくらい。ここ最近女将は常に忙しそうだったが、なんだか気持ち悪いくらいみんなに優しかった。

「今日はどうじゃ? 死ぬ覚悟はできたか?」

「ばっちりさ。昨日やれることは全部やったからね」

 一つ大きく伸びをして、ハイカラな袴を翻す。

 毎日家を出る前に確認された。今日の覚悟はどうだ、と。私はいつも笑顔で答える。完璧だ、と。車掌さんはいつもと同じ、帽子を目深に被ってどんな顔をしてるかよくわからなかった。

 その日、私は女将に呼び出されていた。初めて来た日に入って以来、女将の部屋に入るのは二度目だった。

 高そうな金杯や掛け軸、西洋のお酒に香料が置いてある。腰が沈むほどふかふかのそふぁに座らされ、苦いコーヒーを飲んだ。けぇきもついてきた。

「二人きりなんて、珍しいじゃないか。最近忙しいってんで、出勤日数を増やしてくれってんならこれだけ食べて帰ることになっちまいそうだけど」

 女将は黙って抽斗を開け、二十枚ほど綴られた紙束を机に置いた。瞬間、心臓が大きく跳ねた。甘ったるいはずのけぇきが、やけに苦くなった。

「実は近々新しい店を出そうかと思っててね。ちょいとヤクザ者と手を組むんだが、アンタにそこの女将を任せようと思ってるんだ」

 震える手で紙をめくる。憶測が確信に変わったのは、建設予定地の欄を見た刹那だった。

 あの孤児寺のあった場所。女将の新店舗は、そこに構えられると決定されていた。

「あそこは街のはずれで警察の目も甘い。お天道様に顔向けできない商売もできるってわけさ。どうだい? 利益の半分はアンタのものさ」

「……どんなことをするんだい? それに、あそこは人が住んでるだろ?」

「そうだったかねぇ……。まぁ、寂れた寺に住んでる孤児よか商売の方が大事さ。今にこの街は西欧列強の波に呑まれる。そうなった時一番儲かるのが人を売る仕事なのさ。……だから、そうさね。孤児を使えば元手も給金もかからなくていいじゃないか」

 脚がこわばる。女将には見えない車掌さんに、目で合図を送った。どうせ何もできないのに。

 私の守りたいものを壊そうとした犯人が目の前にいる。車掌さんが来てなければ、きっと私が死んだ後彼らは路頭に迷っただろう。そうなれば、最終的に行き着く先は決まってる。私と同じだ。

 息を呑む。女将を睨む。女将は葉巻の煙を大きく噴いた。

「アンタはもう少し聡いと思ったんだけどね。この話を警察にもってかれるのは困るから、勘弁しとくれ」

 突然戸が開かれる。やかましく乗り込んできたのは、見覚えのある十数人だった。

 廃刀令が出されてもう五十年も経つと言うのに、彼らの腰には立派な白鞘が携えられている。

「花扇、アンタはうちの稼ぎ頭だ。私もこんなお別れはイヤなのさ。それとも、朝霧あたりと一緒だったら納得してくれるかい?」

 血の気が引けても、私の頭は回り続けている。こんな所で、こんなくだらない理由でだって?

 この半月、寝る前も飯を食っているときも、ずっと考えていた。私が死ぬのは病気の再発だろうか。事故だろうか。逆上した面倒な客だろうか。どれを考えても、納得なんでできるはずがない。だからせめて言葉に出しておかないと、恐怖で頭がおかしくなっちまう。

「お主はここで死ぬ。斬り殺されて、死体は川に流されて魚の餌じゃ。遺書のおかげで、未来は変わらない」

「なんだってんだい。いつもいつも、私に関係なく分岐路ってのはやってくるね……」

 雲がお天道様を覆い隠した。綱渡りのような、重苦しい緊張の糸の上を歩いていた。

 女将は本当に私を買ってくれている。これが昇進やらここの勤務に関してから、私はきっと頷いていた。だけど、これは話が違う。幸せに生きたいと願うだけの人から、何も持たない彼らから、これ以上何を奪うんだ。

 私が死ねば全てはあの未来通りになる。ふざけるな。だれか好き好んで死ぬもんか。ナツはあの火事で死んだ。花扇は今死んだ。最後に残った陽富ナツは、誰にも殺させない。

 車掌さんが、帽子をあげた。

「抗ってみるか? 煉獄の時刻表に」

「バカなことはしたくない。やってやる」

「毎日死の覚悟をしておったんじゃなかったのか?」

「丁度いいさ。こんな生活、うんざりしてたんだ」

「罰だとか罪だとか、怨まれてるとか、言っておったの。死ねば解放されるぞ」

「死なない。私は死ぬまで生きてやる!」

 誰かが望んでるだとか、誰かへの償いだとか。もうそんなん知ったことか。私はこれから、私のために生きてやる。

 私だけの言葉を聞いていた女将が笑う。手が肩に置かれた。生ぬるい。

「そうか。じゃあ、お主はどうしたい?」

 息を吸う。女将が笑う。拳を握る。女将が煙管を咥える。

 私はその顔めがけて、思い切り拳を振るった。鈍い音が響く。手が痺れる。

「未来も過去も知ったことか! 私が変えるのは今だ! 生きてるこの一瞬の全てを、私が塗り替えてやる!」

 車掌さんが笑った。やくざ者が白刃を抜く。痛みで顔の歪んだ女将が、私を指差し言った。やつを殺せ、と。

 死んでたまるか。ここにいる全員をぶっ飛ばして、私は生きてやる。白刃が迫る。最後の最後まで、私は目を開いていた。だから、見ることができた。

 全ての刀が、私の目の前で止まった。やくざ者はまるで固まった人形みたいに動かない。

「人生時刻表を書き換え未来を操ることは、何人であっても不可能じゃ。じゃが、ワシは人ではない。現世と隠世の狭間を生きる。煉獄行き鉄道の車掌のみが、確定した分岐路を変えられるんじゃ」

 車掌さんがもっていたのは、何十冊かの時刻表だった。その中の一ページ、『陽富ナツを殺す』という文だけが、ペンで塗りつぶされていた。

「今日貴様らがここに来たのは女将に計画の中止を伝えるためじゃ。いいな?」

 消した字の下に新たな文を書き込むと、やくざ者たちは部屋を去っていった。投げ捨てられた書類を全て拾い、破いて窓から投げ捨てた。

「よかったのかい? あんなことしちまって。規則違反ってやつじゃないのかい?」

「いいわけないじゃろ。じゃが、これでワシらは共にお尋ね者じゃ。ワシは鉄道から、お主は吉原から」

「まったく、アンタってやつは。仕方ない。それじゃ、生きようか。この理不尽な世界で、いつか死ぬその日まで」

 私たちは逃げ回った。本物の鉄道に乗って旅をした。孤児寺に手紙出すと、住職が返事をくれた。知らなかった外の世界は意外と私を受け入れてくれた。初めてフェリーに乗って外国へ行っ時は驚いた。なにせ車が道路いっぱいに広がって走っているのだから。

 私は生きた。きっとこの先もこれからも、ずっと私の物語は終わらない。





 ワシらは逃げた。日本から香港、インドを渡り、今はフランスのランスにいる。

 煉獄行き鉄道の車掌が現世に居られるのは、対象と出会ってきっかり一年間だけ。明日にはそれが来てしまう。

 そうなればワシは問答無用で汽車に連れ戻されて、こっぴどくなよ竹に叱られるだろう。規則を破った乗員は連れて行かれる。また何もない、あの煉獄へと。

 まだワシにはやらねばならない事がある。そのために果てのない時間を、退屈と孤独に耐えた。

 ワシに残された力でできる唯一のこと。それは……。

「どこか生きたいところはないか? ナツ」

「なんだい急に。でもそうだねぇ、もう随分旅を堪能しちまったからね。でも、できればもう一度、あの星空を渡ってみたいね……」

 煉獄行き鉄道じゃなきゃ無理だけど。彼女は最後にそう付け足した。良かった。最後に彼女の笑った顔が見られて。

「お前に会えてよかった、ナツ。お前が褒めてくれたから、俺はあの頃頑張れたんだ」

「何のことだい……? それに、アンタそれ……」

 隠し持っていた切符が見つかった。でも遅い。もう刻印は終わっている。出発地点は陽富ナツ。彼女が言った『星空を渡りたい』の願いを叶えるために、鉄道が発行した正式な切符だ。

「あんた、なんで……! いや、どこのだい?? いつの記憶を無くしたんだい?」

「さぁ、どうじゃろうな。それはワシにもわからん。じゃが、安心しろ。お主は十分頑張った。あとはワシが後始末をつける。……不甲斐ない過去の自分の分まで」

 ナツがワシの胸ぐらを掴むより早く、仕込んだ薬が効いた。さっきナツのジュースに混ぜたやつだ。

 幸せな夢を見てくれるだろうか。全てが終われば、彼女はまた心から笑えるようになるだろうか。

 街を離れ山を登る。見晴らしのいい山頂で、切符の端に改札鋏で穴を開けた。眼下に広がる街は、東京よりも幾分か近代的だった。

 汽笛を鳴らす。虚空を切り裂いて、煉獄行き鉄道が姿を現した。空から生えるレールに沿ってくるそれは、ワシの前で甲高い金属摩擦音を鳴らした。

 扉が開くと、なよ竹が哀しげな顔で待っていた。ただでさえワシより小さかった身体が、いつもの半分くらいに見える。

「本当にやるんじゃな。悔いはないか? いや、そんなの聞いた妾がおばかじゃったの。……ほれ、はよう乗れ。残業代はきっちり請求するからの」

 なよ竹の笑顔に連れられて、ワシは汽車に乗り込んだ。乗客としてくるのは初めてだから、少しぎこちなく車内を見渡してしまう。

「妾のこと恨んでおるか? あの日煉獄にいたお主を拾ってしまって一緒に仕事したことを後悔しておるか?」

「まさか。アンタが拾ってくれたおかげで、ワシはこうして己の過去を清算する事ができる。今のワシは、あの頃よりも強いからの」

 煉獄行き鉄道は、はじめなよ竹一人から始まったらしい。そこに機関士の源氏が加わったんだとか。

「さて、もうそろそろ着いてしまうの。それじゃこれから、ずっと預かっていたお主の名前を返す。全ての過去や未来にお主は直接干渉できるようになるが、その代償、分かっておるな?」

 これから先、全ての世界からワシに関する記憶が消える。ワシのいた痕跡は消え去って、現世はワシのいないレールに移り変わる。それが煉獄行き鉄道の掟を破った罰だ。

 帽子と外套を脱いで、なよ竹に渡す。彼女はぶかぶかの駅員帽を目深に被りなおし、こくんと頷いた。

「まもなく、明治四十一年。明治四十一年、八月十日です。駅への停車はごく短い時間ですので、慌ててお怪我をなさぬように、なのじゃ」

 男身一つ。やることも一つ。これは、ワシが救われた物語への決着。不安だったワシに目標をくれた彼女への、精一杯の恩返しだ。

 汽笛が聞こえる。腹に響く振動と金属摩擦が鎮まると、ゆっくりとドアが開いた。その先に広がる、見覚えのある世界に向けて。ワシはやっくりと足を踏み出した。

「行ってこい、ナルコ。いや、鳴子一水。かつて煉獄に取り残された子よ」



 明治四十一年八月十日。忘れもしない、あの火事の日だ。発火予想時刻は午後二時。あまり時間はない。

 寝静まった街を駆け抜け、青臭い雑木林を切り分けた。その建物は、ボロくて汚くて、いつも笑いが絶えない診療所だった。

 建物や現象に時刻表はない。書き換えることが出来ないなら、火の元を消してしまえばいい。

 隠してある鍵で裏口を開け、足音を殺してガス灯をチェックする。時計の針を逐一気にしながら、ようやくそれを発見した。

 一つのガラスから、ガスが漏れていた。それが静電気か小動物のたてた火花に反応したのだろう。

 近くにあったガーゼを巻いて、ガス漏れを塞ぐ。だが、まだ安心はできない。一度確定した事象は必ず起こる。つまり、今日のこの日この時間、この診療所は確実に燃え尽きるのだ。

 何が起きてもいいように、ワシはみんなの人生時刻表を集め始めた。取り出し方は、直接触れて引っこ抜くだけ。痛みもない。

 あと数分後に死ぬ、という欄を片っ端から塗りつぶして生きるに書き換える。過去を変える大罪だ。

 ようやく半分の書き換えが終わった頃、それは起こった。雨雲一つなかった空が闇に覆われ、激しい雷鳴が轟き始めたのだ。

 嫌な予感がした瞬間、それは的中した。頭を内側から破壊するような爆音と共に、落雷が診療所を貫いたのだ。傷んだ木の外壁は炎上し、隙間や日々に入り込んだ炎は簡単に診療所を包み込んだ。

 半分の子供達はすぐに起きて、異常事態に背を低くし逃げ去った。書き換えられてない側は、叫んだり走り回ったりと、パニック状態に陥った。しかも最初の一撃で先生が耳をやられたらしく、そのせいで避難が大幅に遅れてしまった。

 ワシは泣きじゃくる子供たちを小脇に抱え、外へ連れ出し時刻表を書き換えた。何度も何度も、腕が焦げても、肺が焼けても。

「あとは誰じゃ! 誰が足りん!」

「ヒ、ヒトミくんとナツちゃんが……」

「あいつら……、どこにおるんじゃ」

 庭に大方を避難させた後で、ワシとナツがいないことに気がついた。まだ彼らは時刻表を書き換えていない。このままだと、予定通り焼け死んでしまう。ワシが未来を変えた今、時刻表もどこまで信用できるかわからない。

 息を呑む。既に診療所は半壊していた。炎柱が天を衝き、周りにいるだけで熱波が飛んできた。

 ワシはバケツに汲まれた水を被り、炎の中に突っ込んだ。吸い込んだ灼熱の空気で喉を焼きながら、名前を叫んだ。ナツ、どこじゃ。

 斜めに溶けた階段を駆け上がると、彼らはいた。ワシが右足を落ちてきた柱に潰されている。ナツは動けない。

「諦めるな! まだお前らは生きられる!」

 まずナツの時刻表を確認する。やはり彼女は生き残るらしい。かと言って放置なぞ出来るはずがない。

 ナツは先生がくれたびしょ濡れのシーツを羽織っていた。二分は耐えられる。それまでにワシがワシを助ければ。

 まだ炎の明るい柱を素手で掴む。両手が焼け爛れる痛みが襲ってきたが、今は関係ない。ワシは鍛えたんじゃ。もう弱いと言われないように。

 ナツ、お前と胸を張って街を歩けるように。

 腹の底から力を絞り出す。腕の筋肉がぷちぷちと音を立てた。

 悲鳴のような、嗚咽のような轟きが漏れる。瞬間、柱が持ち上がった。最後の力を振り絞って、ワシをそこから引きずり出して時刻表を書き換える。

 息つく間もなく、建物が嫌な音を立て始めた。もう下まで二人を抱えて降りる余裕はない。感覚のない左手では人は抱えられない。ならば。

 思い切り体をひねり、死んだ腕で瓦礫をぶち破った。力の限り腰をひねり、二人を外へ投げ飛ばす。

 息が切れると同時に、力も尽きた。自分が帰る余裕はない。

「……すまんの、ナツ。なよ竹、手伝いはムリじゃ……」

 煙を吸いすぎたせいか、意識が遠のいていく。喉が焼けて言葉が出てこない。

 ワシは頑張った。ナツと同じくらい。でも、ワシはもう、手を伸ばされても握り返す力もない。

 汽笛が聞こえる。

 力強い車輪の廻る音が、腹の底を震わせた。炎が止まっていた。何もない虚空から、その汽車は現れた。

「ヒトミ! 手を!」

 車窓から身体を乗り出したのは、見覚えのある人だった。ワシの記憶とこの日の記憶をなくしたはずなのに。ナツが煉獄行き鉄道に乗っていた。

 力なんて残ってない。だから根性だった。感触の残ってない手を取られ、無理やり汽車の中に引っ張り込まれた。

 ぼろぼろのワシを見て、なよ竹がすぐに治療を施してくれた。未来の秘薬を塗ると、立ち所に痛みが引いていった。

「……ナツ、なんでお主がここに。この鉄道の記憶は消したはず……」

「残ってたのさ。なよ竹ちゃんからもらったお試し切符が。……あんたこそ、なんでここに?」

 そう言えば、はじめにあった時になよ竹が切符を渡していた。使えるのは予想外だったが。

「分岐点の消去じゃ。本来ならワシはここで死んで煉獄へ行き、なよ竹に拾われる。じゃがワシの死を無くせばその分岐点は消去される。一度この鉄道に関わってしまったワシはもう特異点じゃが、お主は違う。特異点に関わらなかった世界のワシと、他の全員とで生き残る。ずっと、このチャンスを待っておったんじゃ。なよ竹がお主の元に行くのを」

 なよ竹にも誰にも話したことがなかった計画をペラペラ話すとは。きっと疲れていたんだろう。

 ナツは優しい顔で、ワシの頭を撫でてくれた。

「アンタが助かってよかった」

 泣いたんは、いつぶりじゃったろう。両親が死んだ時以来じゃろうか。泣き方も忘れたワシの声が、誰もいない車両に響いていた。

「実はね、そろそろ転職しようかと考えてたんだ。ほら、あんなことして今さら娼館にゃ戻れないだろ? つぎは、そうだね。日本初の女車掌、なんてのはどうだい?」

「おぉっ! いい響きじゃの! よし、ナツ。今日からお主の名前の一部を妾が借受ける。その代償に、仕事をやろう。まだ車掌見習いじゃけどな」

「それじゃ車掌はまだ休んでな。私一度これやってみたかったんだよ。

 次は終点、終点でございます。お忘れ物のないように。終点ーーーーーー」

 汽車はいつか終点に着く。しかしそこは同時に、始点でもある。

 煉獄行き鉄道は、今日も空を走る。誰かを乗せて、想いを届けるために。だからまだ、この物語は終わらない。




「早くしな! 汽車に遅れるじゃないか!」

「わかっとるわい、ナツ! お主がこんなに荷物持たせとるんじゃろうが!」

 春の中頃、人が旅をしたくなる季節。今日も駅は、溢れんばかりの人で賑わっていた。

「あと五分だって。よかったね、なんとか間に合ったよ」

「なぁ、今の音聞こえた?」

「ん? なんのことだい? どんな音だい?」

「いや、いいさ。たぶんワシの気のせいじゃ」

 時は大正、ロマンの世界。馬車は自動車へ。汽車は電車へ。人は外の世界を夢見始め、いずれ忘れ去られるものもあるだろう。

 それでも、今日も世界のどこかできっと。

 汽笛が聞こえた。





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煉獄行き鉄道 天地創造 @Amathihajime

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