第3話 因果

「いつまで逃げとるつもりや。」

篁のおっさんは言う。

「アホな小説もどき書いて誤魔化しとるんもええ加減にせぇ。」


 そりゃまぁね、分かってますよ。


 血塗れの檀ノ浦、

 いつ行っても生命取られそうになる鎌倉、

 藤原三代のミイラとの対面も果たしとる、

 妙に懐かしいし大好きな鞍馬山と中尊寺。


 全て偶然よ、偶然---。


 あ、また~パシパシ叩くな、おっさん。

「お前んとこに武士(の御霊)ばっか来る所以をよう考えろ。」


 え、他の人も来るよ---井上内親王さま(皇后さま)とか、早良親王さんとか、崇徳上皇さんとか---。


「御霊(怨霊)はん、ばっかやないか。」


だって、御霊さん仲良いんだもん。悪さはされないし、別に---。

多分、魂的に同類っつーか、シンパシー感じるんしょ、きっと。


「まぁ、黄泉津比良坂の扉を持っとるからな---あっち側のモンではあるがな---。」


 はいはい、あの世系ですよ。

 だから、あんたが来とるんやんか、小野篁さん。

 今日びのスピな姉ちゃんみたいに、天使だの光だの言うとる連中んとこには、行かんやろ、あんたは。


「当然やろう。遊びやおへん。」


 そう御魂上げは、遊びぢゃない。

 ひとつ間違えば何時だって生命取られる。

 覚悟が無ければようしきらん。


 でもね~


 源平合戦の御霊って、ナンボいると思ってんのよ。

 大概、古すぎてタチ悪いのしか残ってないやん。


「今世こそ、きっちり、責任取れ、責任。」


おっさん、んなこと言われてもなぁ~。

武家の頭領なら、頼朝さんおるやろ、源頼朝さんが。


「あんなぁ~、タチ悪いの知っとるやろ、頼朝は。性悪過ぎて、まだ、上がっとらへん。使い物にならんのや。武家の頭領の責任、果たしや。」


ひでぇ---。

言いがかりだ---。


そんでなくても、大したもんで無くとも、過去世を抉るのはエライしんどいのに---。


生命がけで、小説書くんか---。


「義経千本桜 妖かし猫語り」


---てか?


「覚悟、決めぃ。」


はいはい、そのうちね。

フィールドワーク行かせてくれたらね。

生命取られるかもしれんけど---。


ま、それも因果応報てやつですかね。


祇園精舎の鐘の音---かぁ。


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妖(あやかし)猫の当世冥官修行メモ 葛城 惶 @nekomata28

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