第2話 基本

 おっさん、また来てる。暇だな。

「暇ではない。」

 口に出さなくても聞こえるから始末が悪い。

「で、何?」

 まったくやる気の無い私。

「経文は?」

「般若心経と観音経。」

「それだけか?」

あと、要らんもん。基本、私は神道系。

「祓祝詞ならそらで言えるし、大祓祝詞あるし---ヤバい時には神様呼ぶ。」

「祓い浄めか。」

「当然。」

 私は、そんなに優しくない。

 時と場合によっては、御霊さん、消滅させることもある。人間じゃなくなっちゃった場合はしょうがない。古い怨霊の中にはそういうのもいる。

「まぁ良い---。」

 血筋だからねぇ---。

 神主と僧侶のMIX だけどね。代々で古いのは神主---て言うより、古代の巫系。国家神道じゃない系統。ま、いいけど---。


「仕事じゃ。」

 ふ----と見ると、痛そうな人。勿論、現代人じゃない。

 鎧着てガシャガシャさせて、重そう。致命傷は---あぁ、袈裟懸けに切られて、槍刺されてるね。

 ちゃんと、自分の首持ってきてるね。

 はい、首斬られてます。が、だいたい存命中に斬られても、ほとんど死にかけた状態だから、痛みは身体のほうが大きい。

 んじゃま、仕事しますか。首、乗せてね。

 斬られた部分に合わせて、頭を身体に乗せる。まず、骨、接合。腱、リンパ、大動脈、大静脈、筋肉、皮膚---と内側から順番に接合。で、エネルギー流して、終了。

 後は、身体の傷も、同じく接合。

 はい、おしまい。所要時間、約20分。

「ようやった。」

 ありがと、おっさん。

 もっとも、やってんのは基本、私じゃないけどね。先祖さま。神主から医者に転職して、ほぼ一千年からの先祖おるからね。

 霊体の治療に医師免許いらんしな。

「要るぞ。」

 あれ?要るの?

「血統と霊統がいる。」

 つまり、誰でも出来るわけじゃなくて、DNA とかに医療行為のデータベースがないと出来ない---てことか。

 早い話、先祖さまが、私の身体を通して治療するわけだから、ま、そういう稼業の人がバックグラウンドにいないと出来ない。

 ある意味、当たり前。

『かたじけない。』

と霊体さん。一人で帰れる?

霊体さん、ん~と悩む。

「近所じゃから、連れていっておやり。」

 おっさん、気軽に言うな。重いんだから。

 鎧も着てるし、総重量何キロよ!

 ま、少し滞在して、軽くなってから行こうね。


 で、お経のCD を流しすこと一週間。

 勿論、お香も焚いて、お水もあげて---。

『酒は---。』

 ありません。ダメです。成仏してからね。


 てな行程を経て、隣のとなりの街まで、友達とドライブがてら、お務めしていたお城の辺りをぐるり回るうちに離れた。

 どういう仕組みか解らんけど、道を思い出したのね~。さいなら。もぅ来んなよ。

 ま、地元の方は楽と言えば楽よね~。

 意識辿れば、だいたいの場所わかるしな。

 敢えて名前訊かなくて済む。

 これが実は大変なんよね。




 面倒な遠距離の方の話は、また後日。

 も、寝る。

 

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