10. 夏の日①


寒さ暑さもなんとやら、なんて言ってた日が懐かしいくらいに、もはや夏の気配を感じる今日この頃。


その多分に漏れず、今日も太陽が照らしつけている訳ですけれども。

一体全体、何の恨みがあって、このような仕打ちをなさると言うのか。責任者は出てきなさい。


「はぁ……あっつ……」


容赦なく照らす太陽に、もはや私のライフはゼロで。

体力やる気食欲その他諸々、根こそぎ奪っていく太陽さんは、何故このような仕打ちをなさると言うのか。責任者は出てきなさい。


「馬鹿なこと言ってないで、いい加減起きなきゃ……」


ベッドの上でうだうだとしている時間も気持ちよかったけど、流石にそろそろ起きないとね……。


「と言うか、何故にエアコンが切れているの……?」


そりゃ太陽さんに勝てない筈で。

強大な力に打ち勝つために、文明が発達したというのに、その力を放棄してはいけない訳で。


「と言う訳で、えい!」


ピッと音を立てた後、動き始めたエアコン。

涼やかな風に、人心地をつきながら、お腹の空き具合を確かめる。


「うん、お腹は空いてる……」


但し、冷蔵庫には碌に物が無かった筈。


「でも、買い物は行きたくない……」


この灼熱地獄の最中に出掛けるぐらいなら、いっそ今日一日の食事を抜いた方がマシ、と声を大にして言いたい。


そう、決して、私がズボラだとか、面倒くさがりとか、そういう訳ではないのです。ええ。ないったらないの。


「いやでも実際、この暑い中出かけたくないなぁ……」


でも……買い物に行かないと、本当になにもないのよねぇ……。


「出前……いや……外……でも……あれ?」


クッションを抱えつつ、もだもだしていると、スマホの画面に見慣れた名前。


「もしもし?」


「あ、もしもし?先輩ですか?」


そう、悠ちゃんからの電話だったのである。

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短編集 百合 ワルク @tepu

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